第6話

back or enter⑥


 時はアッ!っという間にすぎて行くー。

 何年も宝箱の中で過ごしてきたミミック達は外に冒険することで個々の特色が色付いていく…。

 ヒロ、田端、小林、永野、雄介はピッキングのバイトを初めてヒロと田端と永野は共同でアパートを借りた。

 亮一は細田が面接に落ちた小僧寿しでバイトしている。

 神村君は引越屋のバイトをたまにしている。

 磯野は実家に帰っていった。実家は不動産屋で後を継ぐために一から勉強すると言っていた。

 佐藤仁は彼女が出来てモンハンやりに来なくなった。

 晴夫は俺が勤めていた設備屋を紹介してそこで働いている。

 赤松君は型枠大工を目指して近所の棟梁に弟子入りして毎日厳しい仕事をしている。


「崇は明日実家に一事帰宅だったっけ?」

「…はい」

「そうか、たまに親と会話するのもいいかもね」

崇ははにかんでいる。

 崇はモンハン最強で崇のキャラが死んだところを見たことがない。いろんな事に飲み込みが早く、俺の事務仕事も手伝ってもらっている。


 朝ー。

 四時三十二分ー電話がなった。スタッフの女性からだった。


「矢吹さん…崇君が…亡くなりました…自殺です」

「なんで」

「遺書がありました」


 僕は罪を犯しました。

 生きる意味の無い僕が友達に囲まれて楽しんでいました。意味の無い人間なのに楽しむなんて罪です。こんな罪人は罰を受けなければ行けません。

 ありがとうございました。


 崇


「…それが彼の出した答えなのか…」

「矢吹さんはお葬式には行かないでください」

「なんで」

「問題を起こさないで欲しいからです」

「…わかった」


 その日、俺は、色んな所を歩いた。神楽坂から新宿、渋谷、代々木公園の野外ステージで昼寝した。

 空に流れる雲が彼等とリンクした。繋がって大きくなる者、細く長く流れる者、か弱く消えていく者、俺は彼等に何をしていたんだ。

 なにもしていない…ただ居ただけ…。


「矢吹さん…これ」

空雄がゲーム機を渡してきた。

「なにこれ?」

「崇君が昨日、俺に使ってくれって渡してきたの…」

「…」

「てっきり実家に行っている間だけ預かって欲しいのかと思って…いいよって…簡単に引き受けちゃったんす…あんときに断ってたら…もしかしたら崇君帰ってきてたかもしれないすよね」

「空雄のせいじゃないよ…彼の出した答えが自ら命を絶つ事だったんだからね」

「悲しくないですか」

「悲しいよ…マジでね…でもよ…どうしようもないじゃん…」

「そうですけど…」

「俺らは生きようぜ、楽しく思うがままに生きていこうぜ…崇君も俺らのそれを見て自分自身の答えを出したんだからさぁ…無駄にしないで行こうぜ」

「ですね…このPSP貰って良いですか?」

「いいよ。空雄が持っててやってくれよ」

「はい、これからこっちのPSPを使っていきますよ」

「それがいいね」

その夜は空雄と散歩した。

 河口付近の橋から東京タワーが見えた。観覧車もライトアップしていた。

 運河に石を投げるとプランクトンが反応して光ながら散り散りになる。

「空雄!すげぇな!すげぇ綺麗じゃないか!まさにお前達だな!光ながら旅立っていってるよ」

「コイツらはニュータイプですね…俺も飛び立ちますよ…矢吹さん…明日、俺の髪を切ってくれませんか?」

俺は空雄の肩をポンポンと叩いて笑ってやった。

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