第一章閑話 『隠された『想い』』
コウは気配を殺し、壁越しから聞こえる声を聞いていた。
あの後、泣き止んだコウたちは「ごちそうさま」を言い、コウは自室に戻ることにしていた。
だけど、どうしても気になってしまったのだ。二人だけの会話を……。だから、今こうして立ち聞きをしている。
「そういえば、レイト先生はコウと会っていたようだけど、何と言ったのかしら。だって、レイト先生もこの事を知っていたのでしょう?」
「あぁ、どうなんだろな。どちらかというと、彼は否定派だったからね」
……レイト先生がこの事を知ってた⁉︎ それに、否定してたって……。
思いもしなかった事実に、コウは驚愕する。
……なら、さっきの勝負は――木剣での稽古は、どんな想いでやっていたんだ?
『迷うな、少年』。
最終的には、激励にも近い言葉をくれたレイト先生。その行動の裏には、隠された『想い』があった。
コウは、静かにその場を離れ、外へ出た。
外は予想よりも肌寒くて、コウの頭は急速に冷えていく。
「……レイト先生」
夜空に浮かぶ遠い星を見つめながら、コウは呟く。
この時期は、空気が澄んでいて星がよく見える。
「あっ……」
翠色に光る星を見つけたコウは、思わず声を上げた。
そして目を瞑り、レイト先生の優しい笑みを一瞬浮かべたコウは、家に戻る。
「……今日は、もう寝よう」
微かに笑みを浮かべながら、コウは歩き始めた。
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