第五話

「いらっしゃいませ。1名様でよろしいですか?」

何この女。私が独り身だっていうの?失礼なやつ。あとで本部にメールしてやろう。こういう失礼なやつは罰せられるといい。いい気味。

「お待ち合わせですか?」

当たり前でしょ。あなたとは違うのよ。見て、このバック。あの有名ブランドの最新モデルよ。服もそう。高かったんだから。髪だって、今朝美容院で整えてもらったし、このカラー、トレンドよ。ネイルだって人気のネイリストにやってもらったの。見て、これ。キラキラしてて素敵でしょ。アクセサリーだって有名作家の一点物。オーダーしたの。私のイメージに合わせて作ってもらったの。

彼、こんな私を見たらなんて言うかしら。ハグ?ううん。キスしてくるかもしれないわね。こんな場所ではしたないって思われちゃうかしら。でも仕方ないわよね。私が魅力的なんだもの。店中の人に見せて幸せのおすそ分けをしてあげましょう。

「あの…お客様、そろそろ閉店の時間なんですが…」

どうして?

「あ…あの、他を片付けますので…」

なんで?

「その、もう少し…大丈夫、です…」

どうして?

なんで?

「お客様…申し訳ありませんが…」

どウして?

なんデ?

ドうしテ?

ナんデ?

「閉店の時間ですので…」

なんでよぉおぉぉぉぉぉぉおおォぉおォ!

「あ!お客様!」

なんで来ないのよ!おかしいでしょ!あ!もしかしたら事故にでもあったのかもしれない!道路に出て見なきゃ!

「お客様ー!」


あっ………………………………


「きゃあぁぁぁぁぁ!」

「きゅ、救急車!救急車!早く!」

「俺じゃねえよ!その女が飛び出してきて!」

「早く!救急車呼んで!」

ココニイルワ

ココデ

マッテ

カラ

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