第三話
二人は司の車へと乗り込んだ。向かう先は勿論件のファミレス。我が物顔で助手席へ座り、ドリンクホルダーにタンブラーを置く。もはやここは三輝の指定席のようなものなので、司も何も気にしない。
「で?どこに向かえばいい?」
司はエンジンをかけてからナビへと手をかける。
「っと、今調べるから待って」
同じ県内とはいえ少し離れたファミレスなどというピンポイントな地理が分からないため、三輝はそのファミレスの住所を検索した。
「ここ、かな?何店まで聞いてないけど、この地域でファミレスFはここしかないから合ってると思う」
そうして検索して出た住所を司へと見せると、手早くナビ上で検索をする。やがて地図が表示されると、画面を覗き込んだ三輝は納得したように数回頷いた。
「合ってるね。その先に中学あるでしょ?そこ、俺教えに行ったことある学校だ。多分あの先生が元々いた学校だよ」
「へぇ…」
「いや!多分蒼夜君も行ったよ?演奏会に一緒に!」
「そう、だった?」
明らかに覚えていない様子に、相変わらずだなと三輝は苦笑を浮かべた。
何か事象があると1人でも動き出す割とフットワーク軽めの司だが、如何せん方向音痴なのだ。地名を言われれば何となく思い当たるのだろうが、周囲の特徴を言われてもピンとこない。今回もそうなのだろう。ナビへと入れればあとは音声案内が始まるが、それでも変な道に迷い込むのが司である。三輝はそっと地図アプリを開き、先程と同じ住所をいれて手元でのナビができるようにした。
「さ、しゅっぱーっつ!」
夜も遅い時間に差し掛かるというのに、このテンションはなんだろう。だがそんな明るさが三輝の持つ陽の気の源なのだろうと、司は軽く返事をしながら口元を緩めた。
案内開始を押しナビが起動したのを確認すると、アクセルを踏みファミレスの駐車場を出た。しばらく道なりに走り、国道にでるのをナビの音声が教えてくれた。
ふと、以前一人で沖縄に旅行に行った時の事を思い出した。
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