7.一日におやすみ
エレベーターを上がって、オレはとあるマンションの一室へと案内された。
シズクさんの部屋だ。彼女はここで暮らしているらしい。オレは買ってきたヌードルを机に置くと、彼女が来るのを待った。
玄関で彼女は義足を交換していた。傍に設置された数本のアームが、足元で作業をしている。
しばらくして、シズクさんが机に着いた。外で使っていたメカメカしいのとは違い、人間の素足に近い感じの物を装着している。
「クタクタだわ。今日は色々ありすぎ」
シズクさんがぶつぶつ呟いている様子を見ながら、オレは電気ポットのお湯をヌードルの容器に注いでいた。
コンビニのヌードルも色々と種類があって、散々悩んでしまった。時間を掛けた末に、“ナマコフレーバー”というのにしたが、美味しいのかな? そもそもナマコってあまり食べた事無かったよなー。
「あ~、車もオシャカになっちゃたしな~。色んなディーラーと交渉を重ねて見つけたお気に入りだったのに…」
シズクさんの不満がピークに達する前に、ヌードルが間に合った。“ハバネロフレーバー”を手渡すと、用意していた缶ビールと共にすすり出した。
オレもナマコフレーバーをすすってみると、何とも言えない味がした。ナ、ナマコってこんな味なのか?
「それにしてもあの強化外骨格野郎。あいつも“蛾”だったなんて。いつもは滅多に検挙出来ないのに、どうして今日に限って二人も遭遇するのかしら? 不思議といえば、アヤト。あなたもそうね。あいつに当てたあの力は何? 人造人間は一般人よりも強力になるよう調整されているそうだけど、あなたもそうなのかしら?」
「う~ん。思いつかないですね。あの時はあいつをぶっ飛ばそうと頭が一杯でしたし、何であんな事が出来たのかもわからないんですよ」
そうよね、とシズクさんはビールに口を付ける。口には出せないけど、こうして見ると、疲れたOLみたい。
食事の後、交代でシャワーを浴びて、寝る事にした。シズクさんと一緒に寝るわけにはいかないので、オレはソファーに身を預けた。
「明日はあなたの住民登録とかしなくちゃね。アヤト、おやすみなさい」
返事をして、俺は窓の外の夜景に目を向けた。色々あったけど、オレはこの街が好きになりつつある。街の明かりに希望が照らされているような、そんな考えが脳裏に浮かんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます