8.嗅覚サーチャーで名犬だワン
首を左へ捻ってみる。
鈍色の鼻が左へ傾く。
右へと捻り返す。
鼻も右へと追従し、痺れを切らしたようにワンッ!と吠えられた。
オレはダイキのおっちゃんがくれた試供品のワンニャンフードブレッド〜犬も猫もパンが食べたーい!〜を差し出した。
バクっと食われた。オレの手を傷つけずにパンだけ食うとは賢いだけあるなあ。
オレもおっちゃんから購入したゴカイミートドッグピリ辛マスタード入を頬張ると目の前のサイボーグ犬の食事を飽きもせずに見つめていた。
シズクさんと出会ってから2〜3ヶ月経っていた。
身元不明であったオレはシズクさんの助力を得つつ住民登録の為に試験やら資料提出やらで奔走し、今では自由に表を歩ける。
仕事も手に入れた。あの時手に入れた不思議な力で警察お抱えの密偵に晴れてなれた。
ま、まあ、ドクターや偉い人達の実験に付き合わされて、とんでもなくエラい目に会ったが。
「どう?ジュピターの調子は?」
ツカツカと金属の足音と共にシズクさんが声を掛けた。
「コイツが噂の新人?ありえねー!!!」
「うおわぁ!?」
いきなりの犬の発声にオレはひっくり返った。
「こんな正体不明の青瓢箪に俺様の命を預けられるかってーの! まあ、メシは美味かったが」
「喋れるんかい!! いや…サイボーグならありなのか?」
ジュピターは元優秀な警察犬であり、逮捕劇の負傷で機械の体になったらしい。
電子技術の発達により、コンピューター経由で犬の思考は完全に解読出来る様になったのは知っている。
瀕死のジュピターに担当者がどうして欲しいっと聞いた際だ。
「俺様の身体をロボット化しようぜー! 武装てんこ盛りで生き返るぜー!」
多大の功績で生まれ変われたが、警察犬の範疇を大きく超えた為に、密偵に収まざるを得なかった。
「ファンキーな組織だ…」
シズクさんの説明を聞いたオレは天井を仰いだ。
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