6.トンネルの襲撃

 シズクさんに長く待たされた後、彼女の車に乗せてもらった。

 色はスカーレットの流線型のスポーツカーでこれまた彼女に似合っていた。だけど、中は機械がごちゃごちゃしていて、飛行機のコックピットみたいだった。

 オレを迎えるにあたって、上司を説得するのは骨が折れた様で、戻ってきた時は満身創痍って感じだった。

「すっかり遅くなっちゃったから、コンビニでヌードルでも買いましょ。アヤトもお腹が空いたでしょ?」

 確かに空腹だったので、賛成した。それにしてもやっぱり、コンビニあるんだ。それにヌードルってカップ麵かな? 何でヌードルって呼ぶんだろ?

 車が急発進し、オレは席に抑えつけられた。他の車が少ないから良いけど、スピード出し過ぎじゃないか!? 何か周りが避ける様に走ってるし!?

 ばんばん他車を追い抜くと、いつしかこの車だけになった。

「家のそばにコンビニがあるの。私のIDカードで買って上げるから、何でも良いわよ」

 シズクさんがそう言ってトンネルに入った時、衝撃と共に車が吹っ飛んだ。

 二転三転してようやく止まると、車は仰向けに転がっていた。幸い二人共、全身エアクッションに覆われていて無事だった。

 やっとの思いではい出てみると、車の向こうに大きな何かが佇んでいた。

「強化外骨格… 何故こんな所に」

よく見ると、ロボットみたいな巨体がバズーカとミニガンみたいな代物を携えて佇んでいる。

「それから降りなさい‼ 自分が何をしているのか分かっているの⁉」

 相手は無言でミニガンを構えた。砲身がゆっくりと回転するのを見ると、慌てて車の影に隠れた。

 けたたましい発砲音と共に、車体が揺れる。ガラスは飛び散り、オレは頭を抱えて収まるのを待つしかなかった。

―――サイドワインダー起動。“実弾モード”ヘ移行シマス。

 シズクさんの方を見ると、決死の面持ちで銃を構えていた。

「ここに居て。ちょっとまずいけど、何とかするから」

 そう言うと、義足の方から音がした。目を向けると、足裏から小型のタイヤが出現している。

 小さいエンジン音と共にシズクさんは車から飛び出した。当然弾が飛んでくるが、凄いスピードで避けていく。

 ジグザグに動いて、相手の手が止まった隙に発砲する。銃は思ったより高威力の様で、当たったロボットは衝撃を吸収しきれずによろけていた。

 シズクさんは大きな弧を描きながら、ロボットへの間合いを詰めていき、遂に至近距離に近づいた。

やった! あの距離なら相手はたまらないだろう。オレは期待に顔を輝かせたが、そうは問屋が卸さなかった。

 突如ロボットの胴体が飛び出し、悲鳴と共にシズクさんは吹き飛ばされた。

 どうしよう⁉ このままじゃシズクさんが⁉

「おい‼ こっちだ‼」

 オレは咄嗟に車から飛び出し、相手の注意を逸らそうとした。

 シズクさんが何か言っているけど、気にしていられない。命の恩人をこんな所で死なせてたまるか!

 ロボットのミニガンがこっちを向く。畜生、オレにも何か武器があれば。

 砲身がゆっくりと回転する。武器があれば!

その時、右手から熱いモノを感じた。見れば、手に光が集まって銃の様な形を形成していた。

 オレはとっさにそれを構え、ロボットに向かって引き金らしき者を引いた。

 反動でオレは後ろへ飛び、ロボットの方から轟音が響いた。

 ゆっくりと顔を上げると、煙と共にロボットは沈黙していた。

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