3.運命の出会い
走る、走る。
どこへ駆け込めば良いかも分からずに、通れる所を通り抜け、相手を妨害出来そうな物をまき散らした。
男は諦めずに迫ってきた。他の人を跳ね飛ばし、障害物をなぎ倒してくる。
もう、息も絶え絶えだ。死にかけていた状態から復活したと思ったのに、命の危機が迫っているなんて。神様、お願いだから助けて、誰かオレを救ってくれ!
万事休す。救いの手は無く、オレはとうとう誰もいない空き地へと追い詰められてしまった。
「ヒヒ、肉だあ、刻みがいのありそうな肉が切れるぞお」
うるさい。お前の感想なんか知ったことか。ああ、オレは死ぬんだ。折角苦しい毎日から解放されて新しい人生が始まるかもって思ったのに。そんな事考えちゃいけなかったのかな?死にかけは大人しく死んどけば良かったのかな?
「待ちなさい」
その声に、オレも男も振り向いた。
見れば、空き地の入り口にスーツを着た、セミロングの女の人が佇んでいた。
「ケインね、暴行及び不審なデバイスの所持疑惑で連行します。抵抗せず、速やかにその子から離れなさい!」
男が反抗するのは明らかだった。懐から筒の様な物を取り出すと、それを首元へ持ってきた。
「! アンカー、やっぱり“蛾”か!? 本部へ至急の通信、発砲許可を願います!」
女の人は腰から何かを取り出した。何じゃありゃ?SF映画に出てくるようなメカメカしい銃を手に持っていた。
『“サイドワインダー”起動。電気ショックモードヘ移行シマス』
電子アナウンスの後、銃口がバカッと開いた。するとそこから光が溢れ出す。ゲームのビームみたい。
疾走する閃光。続いて発砲音。
襲い掛かろうとした男は光をくらって、全身を震わせながら地面に突っ伏した。
「本部へ、容疑者の鎮圧完了。傍にいた少年を保護します」
そう言って、女の人はこちらへ歩み寄ってきた。
近くまで来ると、美人だった。スーツ姿に合う、端正な顔立ちをしていた。
「君、大丈夫? 私はシズク。あなたの名前は?」
それが、彼女との出会いだった。
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