第一章 これくらいは変態じゃない……よね?③
(
ドアを開けると、ボートネックの白い
「僕から
「うち、今、お父さんしか居ないから。上がり込んだが最後だよ。ちなみに、さっきスタートレック
「あー、
「カークとピカードが会うヤツ」
「『ジェネレーションズ』か……スポックが出ないんだよなぁ。カークありきと言うか……」
「スタートレックの話はやめてっ。で、どこ行くの?」
「映画でも行こうかなって思ってたんだけど、どう?」
「
「おいっ、それだと完全に意識が
「今は特にないなー。と言うかですね、
「無くはない」
「じゃあ、映画にしよう。ただ、今日はお
「本屋目当てでもない限り、
「それはお
僕らはそんな話をしながら
ホームに入ってきた電車は、都心方面に比べれば乗客は少ないが、それでも
ただでさえ気が重いのに、
となると、問題はやはり……告白。
大体、告白ってどうすりゃいいんだ。言い出す
ここはひとまず先送りにしよう。映画のあとで
映画を楽しむことに集中しよう。さっき無くはないなんて言ったけど、僕はある映画を結構楽しみにしていた。SFマニアの間でのみ評判のタイムトラベル物である。やっぱり、
だが、SFは設定こそが命だ。それを楽しめれば僕は満足だ。
「で、何
僕が映画のタイトルを告げると、
「やっぱりねー。好きだよね、そういうの。でも、タイムトラベル物って、結局『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が最高でしょ? 私、あれを
「それに関しては同感だ。映画好きが、一周回って挙げる好きな映画の代名詞だからな」
「まさにそれ。下手にマイナー映画の名前を挙げるより、ポイント高い」
「
「
「おいっ、口が悪いにもほどがあるだろっ。大体、金魚すくいで取った金魚にガリバーと名付けるアネモネ気取りに言われたくない」
「は? 『コインロッカー・ベイビーズ』はマジで正典だから。あれを
「本は責めてねぇ。僕も好きだ。ただ、僕はアネモネ気取りの
「ダチュラ!」
「おいっ、そういうとこだぞ」
「うるさいトレッキー。スター・デストロイヤーぶつけんぞ。さきっちょのとんがった部分が頭に
耳の下で二つに結んだ
そして、こうやって
お
だが、そのお
さっき
だから、僕は
「そんなものエンタープライズ号の
「はぁ。これだからトレッキーは。何でもかんでも
こんなことを言うと
それに僕がスタートレックに興味をもったきっかけはおじさんじゃなくて、
「おじさんには本当に感謝してる。
おじさんとおばさんは、僕のことを実の
僕の親も、
同年代の子供を持つ親同士の交流は、今も絶えない。
僕の父親が
そして、それを一番喜んだのは、もしかするとおじさんかも知れない。おじさんにとって僕は、
そうこうしている内に電車が駅に着き、僕らはバスに
ここからならバスで十分も
ゴールデンウィークのららぽーとは、当然のことながらとても混んでいた。映画を
映画館のロビーでチケットを発券し、ベンチを探してなんとか
「今日、お姉ちゃんから
どきっとした。ベンチに座ってすぐ、
「なんで?」
「起きたら家に居なかったんだよね。お父さんも知らないって言ってたし」
「どーせ、部活だろ」
「だよね。そうだと思った」
なぜ、急にそんなことを
それから僕らは、何となく無言でそのまま座っていた。僕がスマホをいじりだすと、
──読んだこと無いな。
かつての僕は、推理小説ばかり読んでいた。
そういう
勝手にライバル視して、勝手に負けて、勝手に
だから意識して欲しくて、僕はずっと勝負をしていた。
だったら十分じゃないか。何を迷うことがあるんだ?
おまえは
頭の中でそんな声がする。決着をつけたはずなのに、何を今さら。それはそれ、だ。
その日
気付けば僕は、二人の女性に
どっちに
物語を
「いやはや、
それに
「確かに。四次元と五次元の重力について物理学者に本当に計算させるクリストファー・ノーランはマジで分かってる。そういうのが
「
「あれは
「最後はリアルさをかなぐり捨てて
「それは同意する。
「でしょ? どうせならカタルシスをめいっぱい味わわせて欲しかったよ。まぁ、それはそれとして、そろそろ
「それに関しちゃ何の異論もないな。全面的に同意するよ。正直、人混みってだけで
「その通りだ、アンダーソン君。全く、お姉ちゃんの体力をいくらか分けて
「
──と思う。体力測定でもそこまで
「私は女の子だし。筋力
「それはバーティツじゃなくて、ボクシングだ。
「
「あと、言っておくがホームズに
「とかなんとか言っちゃって。強がんなくていいから。今だって
「やめろっ! そういうことを軽々しく口にするんじゃないっ!」
「そう言えば中等部の
やめてくれ……。これ以上、そういうことを
中学生時代の浅はかなメンタリティをこれ以上
「……
「あらあら、思い出して居たたまれなくなってきちゃった? しかし、
「べっ別に好きなんだから
「文句なんか無いですよー。あ、スペクターと言えば、
そろそろ死にそうなんだけど。いっそ一思いに
「ちょっと
「分かった。僕が悪かった。
「わかればよろしい。さて、
「……
男はいつまで
出来ることならもっと
仕方なく僕は、いつもの公園に足を向ける。それは始まりの場所であり、終わりの場所。
公園に着く
三人で
「寒くないか?」
「やけに
「いや、ほら、
「
「確かに。言われてみればそうだ。ってか、マジで女子のその
「君は教室で
「その呼び方はやめてくれ……。けど、言われてみれば確かにひざ掛け使ってるわ」
「でしょ? 冬場の
「普通に冬だけスカートを長くすれば──」
「分かってないなぁ。そういう問題じゃないんだってば。アニメキャラだって一年中同じスカートの長さでしょ? 季節によって長さ変えてないでしょ? つまり、そういうことなの。
「そんなことを考えていたのか……アニメ
「骨が折れちゃいそうなくらい
ほれ、と言いながら少しだけスカートの
「フェチズムとはこういうことでしょ? よく
やめてくれ。それはマジで
「わかったっ。わかったからスカートを
「このたわけっ。私をホームズの登場人物になぞらえるなっ!」
「僕としては最高の賛辞を
「皮肉屋め……私とは
「……なぁ」
「ん?」
「……付き合わないか?」
どうしてそんなタイミングで言ったのか、自分でもよく分からない。そのことばかり考えていた
「え? それって、男女の仲的な意味の話で言ってる?」
「……ああ」
「おいっ、今の絶対聞こえてただろ! 今まさに会話してたじゃん! 聞き直しが許されるのはハーレム物だけって相場が決まってるんだぞっ!」
「ごめんね。私、生まれつき
「走ってねぇよっ。デコトラなんて現実で見たことねぇ!」
「『トラック
「デコトラ引っ張んなっ。リメイクの話なんて聞いたことないわっ!」
「……もう一回だけ。ね。お願い」
この通りと言いながら、手を合わせる
ほんとに調子が
「えっと……僕と付き合ってくれ」
「……ごめんなさい」
「え?」
このパターンは全く想定してなかった。
あれ?
僕の
「ごめんね
「は?」
僕が
「いやぁ、その顔良かった。実に良かった。
「えっと……それって……」
「
そう言って
「おまえなぁ……マジで
「心臓に
「……それは告白
服で
「引き続きお相手を
「うるせぇ。そういうことは気付いてても口にするなよ。てか、
「じゃあ、温めて」ひんやりとして細い指が、僕の指の間に
「ねぇねぇ、ついでに冷えた
「バカ言うな。いくら付き合ってるって言っても、日が暮れた公園で女子の太ももを
「何がどうヤバいの? 日が暮れた公園がヤバいの? 女子の
「どうあがいても、いかがわしいことする寸前にしか見えないだろ」
「いかがわしいことって何? ねぇ、何? わかんないから教えてよ。
「どんだけ冷たいんだよっ。それ、
僕は
「ほら、立って。帰ろう」
「ん。これはいかがわしくないでしょ?」
まったく──僕は彼女を
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