幕間(村高 兼徳)

 お初にお目にかかります。わたくしは村高むらたか兼徳かねあつと申します。

 本来このような場をいただく立場では到底ありえないわたくしでありますが、ゆえあって役目をいただくことになりましたので、純粋につづり様の関係者として、僭越せんえつながら筆を取らせていただきます。

 本編にて詳細が語られることもあるかもしれませんので、わたくしからは最小限に控えさせていただきますが……。すでにお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、つづり様は尋常な生まれではございません。誰よりも狭く、どこまでも広く深い、この世の不条理で形作られた世界で多くの時間を過ごしてこられました。

 幸いにして今は信頼できるご友人もでき、日々を闊達かったつに過ごしておられます。

 過去には、『自分』様を部屋へお招きしたこともありました。そのような親しいご友人ができたこと、その出来事を喜ばしく語るつづり様をわたくしがこの目で見られること、これ以上の天運は数年前には想像することすら適いませんでした。


 著者の人となりを知ることでその著作を楽しめなくなる、という読者は一定数おられるようで、わたくしも一介の読書好きとしてその方々を尊重させていただきたいと存じます。よって、『自分』様の人となりにつきましてはわたくしからは申し上げかねます。


 『自分』様は男性か女性か。


 先週の『自分』様と今週の『自分』様ははたして同一人物であるのか。


 すべて皆様方の心の内で、皆様方の真実で見つめていただければと存じます。そしてお時間が許すのであれば、別の真実の可能性を念頭に置きつつ、また読み返していただくと、そこに新たな光景が、新たな関係性が見えてくるかもしれません。


 つづり様は尋常な生まれではございません。しかし、今を生きるあのお方のその正体は、まがうことなくただの一人の純真な少女でございます。

 願わくば、この文章の中に生きるただの少女である筒井つづり嬢を、今後も温かく見守ってくださいませ。


 乱筆乱文失礼いたしました。




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