Episode.28 目的に向けて
『さぁ、そろそろ第八回夏季レベル戦クラスLv.6の決勝も終盤かぁッ!?』
そんなアナウンスが大規模闘技場に響き渡る。
フィールドを円形に囲むように段になっている観客席は賑わっており、その熱気は最高潮に達している。
「来いッ! 【
そんな中、フィールドではダークグレーのロングコートを身に纏い、諸手には、甲に複雑奇怪な魔法陣が描かれた白い手袋を嵌めた一人の少年──シンが戦っている。
そして、シンの呼び掛けに応えるかのように出現したのは、漆黒の鞘に納まった一本の
シンはその剣の柄に手を掛けると、ゆっくりと引き抜いていく。
現れた刀身は透き通った青紫色で、不思議な輝きを有している。
『来たぁあああああーーッ!? 『
アナウンスも一層興奮を高める。
「これで、終わりだッ!」
シンは【
その二つが合間って、爆発的な推進力を得たシンは、対峙する探索者との彼我の距離を消し飛ばす。
そして、【リビレラリータ】に魔力を込める。甲の魔法陣が赤く輝き浮き上がる。それに呼応するように【
「はぁあああああッ!」
シンは持ち上げた【
「クソッ……マジで魔法具製作師かよッ!?」
探索者はそんな声を上げながら、その身にシンの斬撃を受ける。
半瞬遅れて、猛々しく燃え上がる炎が、探索者に刻まれた斬り痕から吹き出し、やがて爆発。
探索者のエーテル体は、呆気なく木っ端微塵に吹き飛び、戦闘不能。
シンは剣を振り抜いた状態で、ピタリと残心していたが、勝敗が決したことを確認すると、その刀身を静かに鞘に納める。
『き、決まったぁあああああッ!? 勝者は、市ヶ谷シンだぁあああッ!』
「「「うぉおおおおおおおおおおッ!?」」」
闘技場に沸き起こる大歓声。
『市ヶ谷シン──いや、『
そんなアナウンスに、シンは半ば苦笑いしながらも、観客席に向けて手を振っていた────
「先輩ッ! またまた圧倒的な勝利でしたね!?」
レベル戦が終わった後、彩葉がシンのもとへ駆け付けてくる。
「はっはっは! そりゃもう俺は『
わざとらしく腰に手を当てて、胸を張り、高らかに笑って見せるシン。
「調子に乗ってると、すぐに足を掬われるわよ」
少し遅れてやって来た風花が、呆れたような視線をシンに向けている。
「それにしても、歴代最速Lv.7昇格おめでとうございます!」
風花の横に立つ柚葉が、にっこりと微笑みながら言う。
「この調子だと、風花より先にLv.9になるかもな?」
シンがニヤッと笑いながら風花にそう言うと、風花は不機嫌そうに腕を組んで、横目にシンを捉えながら言い返す。
「ふん、クラスLv.8のレベル戦はそう甘くないわよ? 貴方もきっと躓くわ!」
「でもお前、この前のレベル戦で三位に入って、Lv.8になっただろ? なら、俺でもいけるんじゃないか?」
「な、何でそうなるのよ……?」
「いや、お前と
「は、はぁッ!? 全然互角じゃないしッ!? ちょっと手を抜いて戦ってあげてただけだしッ!?」
「……」
「な、何よ……その目は」
「いや、お前ってやっぱり負けず嫌──ぐはっ!」
言葉を遮るように、風花の右ストレートがシンの腹部に突き刺さる。シンは腹を両手で押さえて、その場に悶絶する。
「な、何よッ!? 年下に勝ってそんなに嬉しいわけ!? この大人げなさ
「「お、大人げなさ夫……」」
風花のネーミングセンスに、彩葉と柚葉が微妙な笑みを浮かべていた。
────噴水のある公園で、例の約束をしてから、一つ季節が過ぎた。
ギルド長から、シンの両親が行方不明になった
また、シンが両親を探しに行く手伝いをするために、彩葉はLv.5に、風花はLv.8へとレベルアップし、柚葉もシンの両親が行方不明になった
そして、遂にその
皆の学校が夏休みに入る期間を利用し、数日間掛けて探しに行くことになったのだ。
シンの両親が行方不明になった
故に、自分達で地形を確認していき、シンの両親が生き延びているであろう場所を探さなくてはならないのだ。
そんな危険な探索になると分かっていながらも、シンはもちろん、彩葉や風花、柚葉も諦めることはなかった。
いよいよ、シンの両親を探しに行く探索が始まる────
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