Episode.17 成り行きパーティー結成
「で、貴方は身の丈に合わないこんな所で何をしているのかしら?」
シンと風花は、ある程度辺りに注意を置きながら話していた。
「いやぁ……冬季レベル戦に向けてステータスポイント集めと、必要な素材を集めに……」
シンは、あははと苦笑いを浮かべて手で頬を
「素材集め? 何の?」
「ん? えっとな、装備店にあるモノを注文してるんだが、それの製作に必要な素材を集めて来いって言われたんだよ」
「あのね……あるモノとか言って
「えぇ……こういうのはお楽しみってことにするのがお約束かと──」
「ふふふ……何?」
不敵な笑みを浮かべた風花が、瞬時に取り出した槍をシンの喉元に突き付ける。そしてシンは
「はい……言います……」
この後シンは、装備店に何を注文していて、何の素材が必要なのかを包み隠さず話した。
─────しばらくして、シンと風花は
「なるほどねー、『クリスタルタートル』のドロップアイテムかぁ……よしっ、なら私も協力するわ。」
「えッ!? マジで?」
「何よ」
「いや……なんか意外って言うか……」
「貴方ね……私を何だと思ってるのよ。」
「あっ……もしかして俗に言うツンデ──ごふッ!?」
シンの腹部に風花の
「勘違いしないで。クリスタルタートルなんて相手にして、貴方が死んだりしちゃったら寝覚めが悪いだけ」
(典型的なツンデレ発言じゃねぇーか……)
シンは口に出さず、心の内で風花の性格を決定付けた。風花はそんなことを知る
「おっ……団体様がいらっしゃったぞ」
「キラーアントね、十五~六体はいるわ」
シンと風花の前から、ぞろぞろとモンスターがやって来た。全長一メートルもある
「レディーファーストでどうぞ?」
「良いわよ? Lv.7の実力を見せてあげる」
そういって風花が背中の槍を引き抜き、やや前屈みに、ビリヤードの
ズシャッ!
目にも止まらぬ早さで槍を突き出し、一体のキラーアントの頭部に突き刺す。そこからは動作が止まることなく、流れるように槍を操っていった。
突き刺した身体から槍を引き抜きながら次の獲物に狙いを定める。再び刺すと、他のキラーアントが飛び掛かってきたのでそれを槍の柄の部分で突く。既に抜き終えた槍の刃で切り払い、宙で黒い塵が四散する。
そんな超絶技巧によって、短時間で計十六匹のキラーアントを討伐し終えた。
「どうだった?」
「凄いな……流石Lv.7……」
「ふふん、そうでしょうとも」
「ただ──」
「な、何よ……」
「装備を見直したらどうだ……? その丈のスカートだとちょっと……」
「な──ッ!?」
シンは気まずそうにそっぽを向き、頬を掻く。風花は、自分の髪の色にも匹敵するほどに顔を真っ赤に染め上げる。
そう、風花の装備は割と軽装である。上は肩や胸当てが金属製なだけで他は布地。下は、ダークグリーンのスカートに、膝上丈の黒いソックス。そして金属製のブーツである。
そのため、先程の風花の戦闘を真後ろから見ていたシンは、意図せずに、風花のなびいたスカートの中をチラッと見てしまったのである。
「見た……?」
「み、見てないぞ」
「私の目を見て答えなさい」
「見てませんッ!?」
シンは風花の目を真っ直ぐ見て(焦点は合わせていない)答える。
「何色か当てたら……もう一度見せてあげるわよ……?」
「え……ッ!? ピン──」
(──しまったッ! ブラフに引っ掛かったッ!?)
シンは脂汗を流す。その量は尋常ではない。
「そう……正解よ……。約束は……守るわ……」
「えっ……マジですか……」
「ええ……貴方の墓前でスカートきちんと
「ぎゃああああああああッ!?」
その後、シンは風花の槍の乱れ突きに追いかけ回されるのだった。
「な、なあ……。そろそろ許してくれよ……」
「……」
だいぶ奥の方まで進んできた二人。しかし、あの事件以降風花は、シンと口を利かない。出現したモンスターも淡々と始末していき、正直シンの出番はなかった。
「はあぁぁぁぁ~~~~~」
「──ッ!? ごめんなさいッ!?」
突如足を止めた風花から吐き出された、とてつもなく長いため息に、シンは反射的に謝ってしまう。
風花は腰にてを当てて、少し考え込むようにする。そして、シンの方へ振り返ると。
「あのさ……貴方、年下にそんなにビクついてて恥ずかしくないわけ?」
「い、いえッ!? 滅相もございません、自分が全て悪いです──へ?」
二人の間に不思議な沈黙が流れる。
(な、何言ってんだコイツ……。ツンデレだけじゃ飽き足らず、年下キャラまで詰めてこようって?)
シンは風花をじっと見詰める。そして。
「年下……? え、お前いくつ?」
「十四、中二よ」
「何ッ!? 態度がでかくて全く年下に感じられなかった……」
「貴方……また槍で突いてあげましょうか?」
「でも、中二にしては彩葉とあまり変わらないくらい背はあるし、スタイルも良くね?」
「えっ!? そ、そうかしら………?」
風花はキョトンとしながら、自分の身体を見下ろす。
(ん? もしかしてコイツ……チョロい?)
シンはふと気が付いてしまった。そして、一瞬とても悪い顔をする。
「あ、ああ! 中二とは思えないぜ!? おまけにそんな可愛い顔してんだ、さぞかしモテるだろうッ!?」
「私が……か、可愛いッ!? も、モテないわよ全っ然ッ!」
「またまた~。俺が同級生だったら間違いなく
「へ、へぇ……貴方、私みたいなのが好みなんだ……ふぅ~ん……」
(チョロいぃ~! チョロ過ぎるッ!)
シンは思惑通り、例の事件の話題から
─────そして、目的のモノは目の前に。
「で、デカイな……」
全長約十メートル、高さの最高点およそ五メートルはあろうかというモンスター───『クリスタルタートル』がシンと風花の目の前に現れた。
入り組んだ洞窟の道から一変、大きく開けたドーム状の空間の真ん中に、そのモンスターはずしりと座り込んでいた。
皮膚は硬く、四肢は巨木の幹のように太く立派。大きな瞳は黄色く光り、歯がない口ではあるが、噛まれたらただ事では済まないのが容易に想像できる。
そして何よりこの甲羅だ。その名前に相応しい───いや、それ以上のものだ。そこからいくつもの透明な六角柱状の水晶が生えており、特に真ん中の水晶は不思議な輝きを持ち、他の水晶に比べて実に大きい。
「大きいだけじゃないわ。あの結晶……見た目から水晶って言われてるけど、あれはれっきとした金属よ」
「金属ッ!?」
「驚くのはまだ早いわ。ただの金属ならまだ良いんだけどね……あれは……ミスリルなのよ」
「ははは……目的の素材があんなに沢山……。直接
シンの素材採集が始まる─────
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