遊んでるのを見てるの

 あ、けいどろ、そろそろ始まるのかな。みんな集まってきたね。男子女子合わせて二十人くらいかな。なんかじゃんけん始まったよ。うん、だよね、さすがに二十人じゃきついよね。鬼は三人でいいよな。まあとりあえず五人ずつに分かれてそこで負けた人の中からまた三人選べばいいよな。じゃ、じゃんけーん。まだ春先だというのに半袖半ズボンの男の子がこう言って仕切っている。周りの子たちもそれに続いて何となくグループに分かれ始めた。一分も経たないうちに三人の鬼が決まったらしく三々五々に子が散っていく。

 鬼は男子二人と女子一人のようだ。眼鏡を掛けたいかにも算数が好きそうな男の子。ベージュのパンツに紺のパーカーというファッション。小学四年生にしては大人びている方だと思う。ちなみに運動はあまり得意ではないのか小走りで何となく公園の中を散策しているという感じだ。もう一人の男子ほど捕まえてやろうという気概が感じられない。

 こっちの男の子は半ズボンとはいかないまでもポリエステルで出来たズボンと同じくポリエステルの半そでを着ている。見ているこっちまで寒く――はならないけど寒そうな格好。だけど本人はまったく気にしていないと思う。この子は年がら年中このスタイルを貫き通しているから。

 この二人と一緒に鬼になった女子は傍目から見てもかわいかった。原っぱと砂場、いくばくかの遊具しか無いような公園にあまりにも不似合いな格好だった。まず紫と黒の小さいリュック。ニーハイにスカート。トップスは白のブラウス。おそらくメイクもしたんだろう。昔と比べてみると目力が格段に強くなっている。

 この三人、誰もやる気がないのかと思いきや案外ちゃんと鬼らしく追いかけている。特に女の子は女の子に対して容赦がない。最初こそ男子が近くにいてお行儀良くしていたもののね。あたりに女子しかいないと分かったら急に全速力で走り出して数人を牢屋送りにしている。牢屋に送る際には鬼が付き添っていくことになっているので女子は左右に男を侍らせている。まあその二人は捕まった男子なんだけど。

 そのまま牢屋番の役を持っている子に引き渡しが始まった。牢屋見ながら捕まえなくちゃならないのにと鬼が鬼らしくないことを言っている。それでも一応ブランコを囲っている柵の中にいてねとルールを補足してる。ブランコは二つだから当然柵も狭くて丁度いい遊び場じゃない?

 そんなことをしている内にもう一人の鬼が男子を連れてきた。随分と走り回ったのか二人とも汗をかきながらぜえぜえ言っている。そのまま鬼は疲れたから見張り番を交代してほしいと現見張り番に頼み込んでいる。しぶしぶ交代した鬼だが、見張り番の仕方のアドバイスを残して立ち去って行ったの。


ぎいっ


 痛い、痛い。いい感じ。ほらなここからだと周りが良く見えるだろ。だから見張りに最適ってことよ。ほんとだあ。こういう喜び方がいかにも小学生っぽい。


 結局、数人は帰ったものの子たちが何回も何回も復活するから、日が暮れようとしても鬼側は勝てなかった。それを悟って鬼の一人が僕の上で地団太を踏んでるみたい。普通に痛いからやめてほしい――いや、もっとお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る