あるこーる

 いや酔っれないっれ。だからあ酔っれないっれ言っれるらろ。見ろよ。全然顔ああくないらろ

 お前、絶対酔ってるって。何飲んだらこんなになるんだよ。

 うーろんはいとかしおれ。

 え、それだけ? そんなわけないだろ。酔って分かんなくなってるだけだろ。注文票見せてみろ。えっと、最初に生ビールとジンジャーエール。ビールは俺だな。その次が生ビールとウーロンハイ。で何品か頼んだ後がレモンサワーとジンジャーエール。それでビールとカシオレ。残りは俺が麦飲んでお前はメロンソーダばっかりか。あ、で、いま俺がレモンサワー飲んでてお前がウーロンハイか。その色は。

 違う。

 え?

 ただのうーろんちゃ。

 ほんとか? 飲ませてみろ。テーブルの上のグラスをパッと取って一口飲む。

 たしかにアルコール入って無さげだな。入ってても入ってないみたいなもんだな。こりゃ。

 だから言っれるだろ。

 おいおいマジかよ。それだけでこの酔い方かよ。しっかりしろよ。勢いで向かいに座った肩を軽く叩く。

 なんだねキミ、吾輩の肩に気安く触って。何か用があるなら先ず口で言うのが通例だろう。そんなことも分からない奴に私と関わる権利はない。いいかね。

 おいおいどうしたんだよ。急になんだよ。怖いぞ。口調もよく分かんねえし呂律も回るようになってんじゃねえか。

 なんだい。本当に口のきき方がなってないな。

 だってよ、お前どうしたんだよ。さすがに怖えよ。ジョッキを倒さないように気をつけながら両肩を摑んで前後に揺らす。大丈夫か。酔い過ぎだぞ。

 ハハハハハ ハハハハハ アハハハハ

 ん? 次はどうした笑い上戸か。

 ハハハハハハハハハハ アハハハハハッ イヒヒヒヒヒヒヒ 笑い上戸? 甘い如雨露? 甘い如雨露って何だよ。食べてみてえな。ねえ、買ってきて甘い如雨露。ネットでぽちって来てよ。な、一生のお願い、な。

 あ? なに寝ぼけたこと言ってんだよ。大丈夫か、水飲もうな。すいませーん、水一杯。お冷ですねかしこまりましたと言った店員がすぐに持って来た。ほら、飲め。

 う、うん。水おいしい。うっ、う。うっ。うあああん。

 なんだ今度は泣くのか。泣きじょ――いや、何も無い、うん。何も無い。ライトブルーのポロシャツに涙が染みをつくりはじめたがグラスから口に移るのを失敗した水たちがたちまちポロシャツの色を濃くする。

 だからさ、お前はさ、これからもさ、俺とさ、こうやって会って、酒飲んだりしてくれる? なあしてくれる? ねえ?

 ああ、してやるよ。いや、させてくれ。


 そっか。ありがと、じゃあ飲みなおすわ。すいませーん、生中——お前も飲む? あ、ああ——じゃあ二つで。

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