修学旅行バス隣の子夢
眠いなあ。どうしてこんなに欲張って何か所も一日で巡ろうとするんだろう。バスの移動中も修学旅行の思い出ですよってガイドさんは言うけれど、結局、自由時間にしましょうかって職務放棄してるじゃん。まあつまんない伝言ゲームとかやらされるよりはマシかもね。まあ眠い私からしたら寝れるいい機会。幸い隣の席はふみちゃんで気兼ねなく寝れるし。小五のときから五年間もクラスがいっしょだから特別好きなものがいっしょとかではないけど仲良しだし一番の友達だと思ってる。ふみちゃんも本を読んで静かにしているし私が横で寝ていても気にしないだろう。
今からホテルの近くの記念館までバスで一時間弱。そのあとみんなで中を見て回ってそのあとはホテルで晩ご飯、お風呂、自由時間、消灯って感じ。なんか疲れたからご飯もお風呂もスキップして早く横になりたいけど、記念館は興味があった。眠くて楽しめないってのもいやだからやっぱりバスで寝とくのが一番。陽も落ちかけだしよく眠れそう。
「せんせえー」
「なんだ田村」
「席替えしてえっす」
「ああ?」
「だから席替えっす。せ・き・が・え」
うるさいなあ。せっかく寝付けそうだったのに。えっと田村くんは仲良し五人組で一番後ろの列を占拠してたっけ。だから先頭に座ってる先生に声が聞こえづらくて大声を出してるのか。理由は分かるけど自分たちだけじゃないから静かにしてほしい。それになんて言ったっけ、席替え? なんでそんな面倒なことを。しかも自分たちは仲良しで固めてるんじゃないの。まあ先生もそんなことオッケーしないか。
「ガイドさん、次のパーキングエリアってもうすぐですよね」
「そうですねあと三分ほどです、先生」
「じゃあそこで一旦止めてもらえますか。運転手さん。トイレ休憩も兼ねて」
「おいみんな聞けー。パーキングエリアで止まったあとは席替えしていいぞ。あと酔いやすいとかそういうのは気をつけろよ」
バスの中が少しガヤガヤとなる。田村くんは俺のおかげだぞとか大声で言っている。私の安眠を妨げやがって。っていうか席替え強制じゃないよね。私、パーキングエリアのあとは本当に寝たいんだけど。
「なんで私の席に西島くんが座ってるの」
「席替えだけど」
「ふみちゃんの横がいいってこと?」
「うん、まあそう」
「まあそうとか言ってるよこいつ。いいのふみちゃん?」
「うん」
「え」
「ほら石松さんもそう言ってるんだしいいだろ」
「う、うん」
「ほらー出発するぞ、危ないから早く座れー」
先生の声が響く。成り行きで座った席は秋葉くんの横。そんなに仲良くはないけどしゃべったことがないわけでもない、そんな感じの男子だ。野球部でピッチャーだったけど薬指を骨折したらしいって誰かが言ってたっけ。今もちらっと目があったけど特にしゃべるわけでもない。秋葉くんが何もしゃべりかけてこないことを確認してとりあえずぼーっとすることにした。秋葉くんが目をつぶった。寝始めるみたいだ。じゃあ私も寝ることにしようかな。
周りはチューリップ畑。今は秋だから多分これは夢。私はベンチでそこに舞うシジミチョウやモンキチョウを見てる。日差しが柔らかいなと思っていると横から手が出てきて太ももを触られた。私は声を出せなかったし横を向くこともできなかった。嫌な夢だと思って起きようかと思ったけど私はやめた。よく見ると横から出てきた手の薬指には包帯が巻かれていたから。
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