私のどこが好き?

「ねえ。みっくん、私のどこが好き?」

 ソファーに座っていると後ろからこうやって甘い声で尋ねられた。


 アヤはちょっと重いのかもしれない。多分ちまたで言うところのメンヘラなのかもしれない。言い合いになることはないけど、アヤとしゃべってるとちょっと大変なことになるときがある。大変とか言ったらまたなんか言われちゃうな。

 まあ今はアヤに質問されてるから答えないと。後ろから腕を回されてる。こうやってぐでっと甘えてくるの本当にかわいい。ちょっとさっきの質問の答えのシュミレーションしてみよ。


(ねえ。みっくん、私のどこが好き?)

「かわいいところかな」

「かわいい! ありがとう」

「うん」

「それだけ? それに見た目だよね」

「いや、だけ、じゃないけど」

「でも、それが最初に出たってことは結局見た目ってことだよね」

「他にもあるけど――」

「けど何? けどってどういうこと?」

「いや、だから、えっと」

「もういい!」

あれ、これだとダメだな。どうしよ。別のパターン考えよ。



(ねえ。みっくん、私のどこが好き?)

「優しいところ」

「私ってやさしいんだ。ありがと!」

「うん、優しいよ」

「具体的には?」

「え?」

「具体的には私はどう優しいの?」

「えっとねえ」

「え? 無いの? なんとなく優しいって言ったの?」

「そんなことはないけど」

「じゃあ、言えるよね。具体的にどう優しいのか」

「例えば――」

「例えば?」

「僕がコーヒー飲みたいって言ったときにサッて淹れてくれたり」

「それってさ、私のこと家政婦としてしか見てないってことだよね」

「え、そんなこと言ってないよ」

「言ってないだけで思ってるんでしょ」

「いや、だから」

「もう、いい!」

あれ、これもダメか。見た目じゃなくて性格の話にしたのに。じゃあ、なんだろ。



(ねえ。みっくん、私のどこが好き?)

「好きなところ?」

「う、うん」

「全部だよ」

「全部?」

「うん」

「全部? 例えば?」

「内面で言うなら、僕が言ったことを覚えてくれてたり、僕の話ちゃんと聞いてくれたり、逆に楽しいことがあったら僕に教えてくれたり、言葉遣いも丁寧だし、いっつも優しいよ。ものの考え方とかも前向きでいいなって思う。向上心もすごいし、尊敬してるもん」

「うん。外見は?」

「目が大きくて、髪型もかわいいよ。ツインテール、僕好きだな。それに服装も自分の好きなのを着て、しかもそれで似合ってるよ。いつも。靴も黒基調のやつもかわいいしヒール履いてるのもかわいいよ。かわいい系じゃないカッコいい服装のときもバチって決まってるし。メイクすごい似合ってるし。カラコンとかもこだわってるんだなって。一緒に選んでるときも真剣でかわいいよ」

「え、みっくん最高。ありがと!! 私もみっくんのこと大好き!」

 アヤが前に回ってきてハグしてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る