とりあえず書く

 なんかなぁ。なんだか気分が乗らない。さっきからパソコンに文字を打ち込んではバックスペースのお世話になっている。よくある「やる気はどうやったら出てきますか」という質問をバカバカしいと思っていたことが恥ずかしい。まあこういうときの対処法は決まっている。なんかやるのだ。そしたら知らないうちにやる気が湧いてくる、はず。


 ということで書きかけても消さずにそのままにすることにしよう。


 お花屋さんは大通りにあるものではないと個人的には思う。だからこの商店街の一本奥のお花屋さんが好きだ。まさかここで働かせてもらえるとは思ってもいなかった。たしかあのときはポインセチアに見入っていたから十二月くらいだったろうか。彼氏も予定もなにも無くぼうっと散歩をしているときだった。クリスマスシーズンで人手が足りなくてさ授業の合間でいいからさと言ってくださったのは店長だった。


 うーん、花屋の導入、きれいなんだけどなあ。あとポインセチアの花言葉は「幸運を祈る」や「祝福」。こういったのも作品に絡められればいいのだけれど。


 はぁいじゃあいきますよ。マメミムメモマモマメミモム。マメミムメモマモマメミモム。あと、もう一回。マメミムメモマモマメミモム。ちゃんと声出しましたか。基本が一番大事ですよ。じゃあ今日もやっていきましょうね。ここで水とか飲むなら飲んでください。そう言いつつティーポットから紅茶をもう一杯注いでいる。飲むときはちゃんと椅子に座るみたいだ。


 さ、書いてみたけどここからどうやって展開させるか名案が無い。このボイストレーニング的な場面。これをどうすればいいのだろうか。


 この二つの題材どちらとも微妙に具体的でなんとも言えない。花屋、十二月、ポインセチア、花言葉。ボイストレーニング、基本、紅茶。起きてくれないかなあ化学反応。ま、こっちも小休止にしようかな。パソコンを閉じ――あっ、思いついた、というかなんというか。ティーポット→ポット。「幸運を祈る」→ラック。pot と luck で potluck 。意味はありあわせの料理、持ち寄りの食事会。そうだこれだ。冷蔵庫のクリアランスセール。さっきの二つを料理してしまえばいい。

 そうと決まれば話は早い。花屋でバイトをする女子大生がボイストレーニングを受けてることにしようか。ちょっと短絡的すぎるか。じゃあ花屋の店長がボイストレーニングに通ってる、いやボイストレーナーだった、意外みたいな展開の方が。


 やっぱりとりあえず書いてみるって大事だな。これでなんとか締め切りには間に合いそう。姑息な手段だけど。

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