笑っていたので
死にたい。なんも良いこと無いし。でも自分から死ぬのも面倒くさいし。友達と学校から歩いて帰りながら思う。誰か殺してくれないかな。こんなことを思うのは不謹慎なのは分かってる。命を粗末にしてはいけない。生きたくても生きれない人もいるのに。とか色々言われちゃう。だから言わない。誰にも言わない。悟られてもいけない。学校のアンケートにも何も書かない。別にいつも死ぬことを考えてるわけじゃない。普通に給食のシシャモはおいしいし二次方程式の解の公式は覚えづらい。アズやまりんとしゃべるのは楽しいしフォリンズのライブは待ち遠しい。だけどまあ寝ようと思ってベッドに入って毛布にくるまって目をつぶったときとかに、ああ死にたいなと思う。生きてなくていいやって。いるじゃんいわゆる殺人鬼みたいなの。こうゆう駅とかにさ。不審な中年男性みたいな。そうそう、ちょうどあそこにいるおじさんみたいなさ。
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死にたいなあ。生きる意味も目的も見い出せない。別に守りたいのも無いし。オヤジもオフクロも死んだし妻も子供もいねえ。仕事も辞めたしさ。辞めたっつーか辞めさせられたっていうか。まあ切られたってことだな。高卒から20年以上勤めたってのによ。誰が悪いとかが無いのは分かってる。俺は頑張ってたし
◆◆◆
男が駅前を歩いている。片手にレジ袋、もう片方は上着のポケットにという格好はありふれたそれ。歩くスピードが遅く酔ってもないのに千鳥足という点だけが不審だけれど、現代人はそんなに周りを気にしていない。夕方のこの時間帯、下校途中の中学生や高校生も多い。談笑しながら歩く女子中学生3人組が男の目には幸せの象徴に映った。男は家から持ってきていた果物ナイフを上着の内ポケットから取り出した。女子3人の前を横切るように歩き右端の子の前で立ち止まった。そしてそれを胸に突きつけ―—。その顔は笑っていた。満面の笑みではなかった。安らかな微笑みだった。男はナイフを持ったまま固まってしまった。しだいに辺りが騒がしくなり横にいた二人が腰を抜かし大人たちが集まってきた。サイレンが近づくなか少女は笑っていた。
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