スイミングスクールは退屈だった
ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ
つまんないなあ。ずっとコレ。準備体操をしてシャワーを浴びてそこから30分くらいはコレ。先生に手を引かれてバタ足をしながら先生の掛け声に合わせて息継ぎの練習。もう低学年じゃないんだし今のうちにスイミング行っときなさいと言われて通い始めたけど。入校テストのときにもっとまじめに泳げばもう一個上の級に行けたかもしれない。それにしてもずっとこれってのもヒマ。たしかに同じ級にはもっと泳げない子もいるけどさ。幼稚園の子も多いし。
また自分の番が回ってきた。25メートルコースの半分のところに台を置いて短く区切ったコースをひたすらみんなで泳ぐ。全部で30人くらいで二人ずつ泳ぐからすぐ回ってくる。
ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ
これを何回か繰り返して終わり。それですぐまた水から上がる。そしたらプールサイドの水色のところに体育座り。友達といっしょに通ってるわけじゃないからしゃべる相手もいないし。なんか無いかなあ。楽しいこと。例えばプールの底がテレビになってるとかさ。そしたらお出かけする車の中みたいになって退屈じゃないのに。
ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ
ってまあ。実現するわけないよね。面白くないなあ。まだ、15分しか経ってないよ。この先生もヒマじゃないのかなあ。でもこれがお仕事だもんね。お金もらえるもんね。
ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ
あ、また後ろの子途中で立っちゃった。たしかに慣れるまでは難しいよね。
ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ
せめてブールの底になんか模様とかあればいいのに。ただのタイルじゃなくてさ。なんかばんそうこうとかが漂ってるときあるけどね。あれは気持ち悪いや。
ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ ぶくぶくぱあ
えっとこれで何回目だろう。早く来月にならないかな。そしたら進級テストが受けれるのに。
ぶくぶくぱあ ぶく ぷはあぷはあぷはあ
え? なんかいない? 下に。黄色の毛むくじゃらのなんか。
奏くん。どうしたの? はい、ぶくぶくぱあ。ぶくぶくぱあ。
そっか。先生は見えないのか。下向いてるときは僕がいるし。なんとか端までたどり着いた。え、いたよね。なんか下にいたよね。でもだれも騒いでないな。いっしょに泳いでる女子も何食わぬ顔だ。むしろ急に息継ぎに失敗した自分を不審に思ってるみたい。あっ、もう次だ。多分見間違い。退屈過ぎて頭がちょっとおかしくなっただけ。
ぶくぶくぱあ
いや、見間違いじゃない。先生の足くらいの大きさの目がこっちを見ている。
ぶくぶくぱあ
うん、絶対絵じゃない。だって動いてるもん。
ぶくぶくぱあ
あっ、黄色いのの後ろから緑色のたこの足みたいなのが伸びてきた。
ぶくぶくぱあ
えっ、こっちまで伸びてくるの。
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