ペットで何が飼いたい

 家族でショッピングモールに来た。今年6才になる娘は暇そうにしている。確かに妻の春物の服を僕と妻が二人で物色しているところなんて見ても何も面白くないだろう。僕は割と好きなのだがお母さんのお洋服いっしょに探そうねと言ってもあまり興味を示してくれない。まあそんなものか。と思っていると見かねた妻が連れて行ってあげたらと言った。あ、でもフードコートでアイスとかはやめてね。晩ご飯食べれなくなるから。僕は分かったよと返事をして娘の手を引く。

 どこか行きたいところある? なんて聞いてもまともな答えは返って来なかったし、あいにくおもちゃ屋さんは先月潰れてしまった。なんとなく歩いているとこの子の視線が向こう側に吸い寄せられた。そちらを見てみるとペットショップぽんぽんと書いてある看板が見える。なるほど、あの大きなブルドッグの絵に反応したのか。わんちゃんいっぱいいるよ、行ってみる? うんっと娘は小さく頷いた。


 いざ来てみると自分がペットショップと縁が無かったことに気づく。犬の展示だけでなく餌やおもちゃも売っているとは知らなかった。餌にもたくさん種類があって国産の鮭使用とかお誕生日ケーキとかまであったりして、人間みたいな食事だ。いや、下手すれば人間よりいいものを食べてるか。娘から目を離さないようにしつつ熱帯魚のコーナーを見ていると、チワワに飽きたらしくこっちに駆け寄ってきた。へえお魚さんもいるんだあ。お、こっちのお魚さんは青いね。黄色のも泳いでるね。こんな風に言いながら見て回る。途中、店員がカメの甲羅を触らせてくれたりもした。思ったよりひんやりしたみたいで触った瞬間手を引っ込めていたけど。

 色んな動物がペットとして飼えるんですねえ。店員にそう話しかけると、ここぞとばかりに店をアピールしてきた。犬や猫からオウムやインコ、熱帯魚やメダカ、カブトムシまで販売しているらしい。そう言われてみると確かに向こう側には鳥の絵が大きく壁一面に描かれている。店員がいなくなったあと別に購入を検討するわけではないが何が飼いたいか訊いてみた。数秒考えて娘が言う。


 ゾウさんがいい。それで背中に乗って遊ぶの。


 僕は娘の自由な発想に驚いた。そうか確かに僕はこのペットショップの中でとも言っていないし、そもそもこの子は実際に飼うことができるかなんて考えていないのか。ゾウさんいいね。そろそろお母さんもお買い物終わったかな。行こっか。


 店に戻ると妻はハンガーにかかった中から洋服を取り出しては戻してをまだ繰り返していた。そこは変わらず2着で30%引きになる売り出し中の売り場だった。

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