座っておけば日給2万
指定された場所に座っておくだけ! 成人男性限定のお仕事です。日給2万円~
いま入っているファミレスのホールのバイト以外に何か掛け持ちできないかと思って適当に求人サイトを見ているとこんな案件があった。たいてい募集を掛けている側、つまり企業や工場などは同じ仕事を色んなサイトやらアプリやらに流しているものだが、この仕事だけはお仕事アシストというこのあたりの仕事限定のサイトにしか載っていなかった。まあ別におかしな話ではないが。
それよりもおかしいのは、というか怪しいのはこの仕事内容だ。座っておくだけで最低2万円のお金がもらえるという。特に詳しくは載っていないが資格や経験の欄に何も書かれていないから条件は本当に成人男性でということだけなのだろう。あまりにも不思議であるが、こういったサイトに掲載できているのだからどす黒い仕事ではないだろう。それに危なそうだったらキャンセルすればいい。適当な理由でもつけて。
そう思って担当者の欄の電話番号に電話を掛ける。メールよりも連絡がつきやすいですと書いてあったから素直に従うまでだ。就業日も明後日ということだから他の人にこんなおいしい仕事を取られるわけにもいかない。
◆◆◆
いやあ。それにしても不思議だ。結局電話はすぐに繋がって至極丁寧な説明だった。サイトに書いてあった条件や仕事内容、時給に間違いはなかった。説明の後、必要最低限の個人情報を伝えたらそれで終わりだった。しかも指定された場所というのは住宅地と農村部の間みたいなところで、そこまで辺鄙じゃなかったから最寄り駅からバスで一本だった。どんな劣悪な環境で座らされるかと思ったが、まあまあきれいな別荘みたいなところだ。上を見上げても天井は高いし、どの部屋も掃除が行き届いている。
家電や水道、ガスなどは好きに使っていいから昼ご飯はそこで食べてくれということだった。午前10時から夕方の5時まで座っておくだけで2万円。しかも俺の部屋よりも贅沢な一軒家で何をしてもいいという。まあ、昼ご飯はカップラーメンにしたけれど。
時計を見たり動画を見たりだらだらと過ごす。本当にこんなんでお金がもらえていいのだろうか。今が3時を過ぎたところだから、もうそろそろで2万円が手に入る。仕事終わりに事務所まで寄ってくださればその場で手渡しも可能ですよとのことだったので、お願いしてある。
トントン
ノックの音。この家にインターホンは無いのかと思ったけれど確かに無かった気もする。はい、いま開けますね。そう言ってドアを開ける。
我々○○署のものですが、東谷元則さんでお間違いないですね。令状がありますのでご同行願います。既に家宅捜索の許可も下りてますので。おい、林、在宅だったから計画通り人数集めて調査しろ。俺は署に戻るから。ではこちらへ。
俺はパトカーに乗った。
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