頭痛を精霊で解決

 頭が痛い。なんでか分かんないけど頭が痛い。ズキズキというのかガンガンというのか分かんないけど。別に思い当たる原因も無い。昨日は日付が変わるくらいに寝て今朝9時くらいに起きたから寝不足でもない。どこか物理的に打ったというわけでもないし。ストレスだろうか。でも最近、特にストレスが溜まるようなことがあったというわけでもない。ストレスは知らないうちに溜まるというけれど本当に心当たりはない。


 でも猛烈に痛い。どうしようもないけど、どうにかしたい。でも薬飲むのは何か怖い。多分一発で治るんだろうけど、依存してしまうことになりそうで怖い。それでそのうちに定量じゃ効かなくなってきて分量が増えていく。しまいには一瓶全部ガッと飲んでしまうみたいなことになりそうな気がする。

 じゃあ、あの手を使うしかないか。久しぶりだけど上手くいくだろうか。とりあえずあの本を取ってきて一覧から適当なのを探さないと。


 間食のジン 食べたいおやつや夜食を出してくれる。

 清涼のジン 涼しくしてくれる。

 温暖のジン 暖かくしてくれる。

 清風のジン 心地よい風を吹かしてくれる。

 照明のジン 明るくしてくれる。

 芳醇のジン かぐわしい香りを漂わせてくれる。

 安寧のジン 落ち着かせてくれる。

 移動のジン 任意の場所に動かしてくれる。

 予知のジン これから起こることを教えてくれる。

 未来のジン 未来に連れて行ってくれる。

 過去のジン 過去に連れて行ってくれる。


 押入れの奥にあった伊達メガネをかけるとずっと真っ白だと思っていたこの本に文字が浮かび上がってくる。このことに気づいたのはここ数年の話だ。そしてこの状態で自分の腕を見ると数字が見える。3。3か。3じゃ高級の精霊ジンは呼べないや。やっぱりこのページで正解。このあたりから適当なのを見繕って呼ぶことにしよう。

 回復系の効果を持ったジンがいいけれどそれはもっと高級なジンの守備範囲だ。だからこのページにはいない。どうしたものか。


 少し考えてこの安寧のジンというのが広い意味で頭痛を治してくれるのではないかと気づいた。いまは頭痛のせいで落ち着かないのだし。


 安寧のジンよ。ぜひともこちらへお越しください。ぜひともこちらへお越しください。


 あれ間違えたかな。何も現れない。そう思いながらページをじっと見つめているとピンク色のスモークみたいなのが少しずつ立ち昇ってきた。よかった成功したみたい。そう思っていると「過去のジン」の文字が黄色に点滅し始めた。これは何だ。お呼びでないぞ。しかし点滅は止まない。それに安寧のジンも出てこない。これはもしやセットで召喚しろということか。


 過去のジンよ。ぜひともこちらへお越しください。ぜひともこちらへお越しください。


 すると黄色のスモークも立ち昇って、そこからピンク色の綿みたいなものと黄色の綿みたいなものがでてきた。


(頭痛を治してほしいんでしょ。私たち二人が治しましょう)

(ああやってやるよ。俺も早く昼寝に戻りたい)


 なんだかそんな声が聞こえたかと思うと頭痛はきれいさっぱり無くなっていた。低級な割にはバッチリのはたらきだ。




 頭痛が治ったみたいよ。よかったわ。ねえ、それにしても過去のジン。どうしたの? 俺も呼んでくれなんて。

 だってお前だけじゃ頭痛なんて治せないだろ。だから来てやったんだよ。

 たしかに高級ジンじゃないからどうしようかしらとは思っていたけれど。

 だろ?だからお前の力も拝借して過去の頭痛の無い状態を今に持ってきたんだよ。

 じゃあ頭痛はどこへ消えたの?

 消えてない。過去のあいつが頭痛に苦しんでるはずさ。原因不明のな。

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