ノートに書きつける
死にたい。なんで生きているのだろうか。朝起きても何かすることがあるわけではない。それでもお腹は空くから何か食べないといけない。何か飲まないといけない。そのためにはお金が必要。親から昔もらったお金を切り崩していくほかない。何も生み出せないけれど何かを消費するしかない。そんな生活が嫌になる。
こうやって悲嘆しても何も起きない。だからといって何か自分に起こせるわけでもない。いや起こす努力をしていなだけなのかもしれない。いや、かもしれない、ではない。ただ自分が努力をしていないだけ。分かっている。自分でも分かっている。現実を見つめなければいけない。自分の周りを。現状を。いま自分が置かれている状況を。自分に何ができるのか。見つめなければいけない。
それでも現実逃避ばかりしてしまう。ぼおっとネットニュースを見たりSNSのトレンドをチェックしたり。日中、外に出てだれかと会話するわけでもない。引きニートと嘲笑われるのが嫌だから基本的には夜中しか出歩かない。そうやって全てから逃げながら自分は生きている。
親が酒が飲みたい。チューハイが欲しい。と言ったからコンビニに買いに行った。あの日はあいにく父親お気に入りの味が売ってなかったから、もうちょっと遠いコンビニにまで出向いた。そこに彼女がいた。最後に会ったのは中学の卒業式。こんな美しい人が現実にいるんだと子どもながらに思ったものだ。そんな彼女がコンビニで働いていた。髪型も変わっていたしメイクもしていた。もちろん当時のままの外見ではなかったけれど何となくピンときた。ああ、あの人だ。あのときと変わらず美しい。芯のある女性。本当にその言葉がぴったり。当時はそこまで考えたことはなかったけれど今思えばそういうところに自分は惹かれていたのかもしれない。
こんな駄文をノートに連ねる。毎日これだけは続けている。今も昔もこれだけは変わらない。自分の独り言みたいな文章から始まったり、その日あった出来事を嬉々として報告したり。自分と向き合う時間なんて言うと気取っているみたいだけれど、大切な時間であることは確か。
一階で空き缶が転がる音がする。今日は虫の居所が悪いのだろうか。また大声で呼び出された。ねえ誰が悪いの。分からないよ。
彼女の顔を見たとき、昔、見ていた夢をもう一回見ている心地になった。自分が少し過去に遡ったようだった。同時にもう戻れないことを思い知った。いま目の前にあるのは今だけで自分にできることは限られている。鉛筆を握りしめて少しずつ頭の中を整理していると、いつのまにか空が白んできた。
ああ冷たい風が気持ちいい。
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