田舎道にて
繁華街には飽きた。同じように区画された道。どこにでもあるコーヒーショップやファストフードのチェーン店。洋服やアクセサリーをウィンドウショッピングするのも好きだけど今日はなんだかそんな気分じゃないや。なんとなく人ごみも避けたい。じゃあ駅から逆方向に行ってみようか。山がある方。あっち側に何があるか具体的には何も知らないけれどたまにはそんな休日もいいよね。スマホであらかじめ調べることもやめよう。満足したらGPS機能でどこにいるか調べて駅に戻ることにしよう。
おお。駅のこっち側は初めて来たかも。さびれてはないけど栄えてるとは言いがたい。とりあえず山の方に向かおう。ぼんやり見える深い緑色の輪郭に辿り着くことはできるんだろうか。一面に広がるのは畑。いまの時期は特に何も育てていないのかな。ただただ車道が真っすぐに伸びていて車はたまに通る程度。狭い歩道を歩いているのは自分くらいなものだ。景色はまったく変わらないけどそれもいいじゃないかと思えてくる。空も見渡す限り水色。自然物とは思えないくらい均一に水色。
ずっと前に見ていた山が少しは近づいてきた。でもまだまだ遠い。そう思っていると右側に別の山が見えてきた。あっちの山らへんには行けそう。じゃあ行ってみようか。パンっという音が聞こえる。車のパンクの音かしら。
山の方に入るとちらほらと民家がある。庭先にも人の姿は見えないけれど家の中でゆっくりしているのだろうか。車はあるし流石に人はいるはず。いてもいなくても別に何かをするわけじゃないけど、ここまで歩いている人にも会ってないから少し怖くなってきた。
歩いていると神社らしきものが目に入った。どこにでもあるような神社かと思ったけれど鳥居が乱雑に並んでいる。少し入ってみようか。水がちょろちょろと流れているところとお賽銭箱と本殿みたいなところ。いたって普通の神社だ。さっき上ってきた階段を下りる。
少し寒くなってきたかも。まだお昼前で太陽も出てるんだけどな。パンパン。また乾いた音が聞こえる。どうやらパンクじゃなさそう。猟銃の音? よく分からないけどあずかり知るところではない。道のカーブがしだいに強まってきた。おまけに上り坂と来た。段々と体力が無くなっていくのを感じる。
ぬっ
音なんて聞こえるはずはないのだけど道祖神がぽつんと現れた。さっきまでこんなの見えてたっけ。カーブが急とは言えど見えないなんてことは無いと思うけど。水でも飲もう。持ってきた水筒を取り出す。あれ、もう無い? この辺には自販機も無さげだしどうしようか。そう思いながら水筒を傾けて底をとんとんと叩く。頭上に簡易的なしめ縄のようなものが渡してあることに気づいた。
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