なんで早起きしたかって

 ああ。朝早く起きた。早起きだ。まだ日も昇っていない。早起きできたのはうれしいし早起きはいいこと。でもずぼらな私が早起きしたのには理由があって、それを考えると手放しには喜べない。あっ、起きてきた。


 おはよ


 まだ半分寝ているような曇った声で呼びかけられた。目はまだ開いてない。


 うん、おはよう


 水色のパジャマが似合っている彼が私の彼氏、悠樹くんだ。今日はゆうくんがアメリカに帰る日。一緒に朝ご飯を食べたら空港まで行く。


 洗面所で自分の髪と格闘してるゆうくんはどうやら寝ぐせを直そうとしているらしい。


 下開けて右の方にあるよ


 ガチャ


 あっ、ほんとだ。ありがと


 ブオーンブオーン


 髪の流れを真剣な顔つきで考えてドライヤーをかけてる姿を見ながら、朝ご飯をつくる。つくると言ってもそろそろトーストは焼ける。あとはインスタントコーヒーを入れてウインナーをフライパンで少し転がす程度。いつもはご飯とみそ汁なのだけど、ゆうくんの家はパン派だったらしく、それに慣れてると言っていたからゆうくんがこっちにいるときはパンにしている。ウインナー3本というのももちろんゆうくんの希望。顔も洗ったゆうくんが洗面所から出てきた。やっぱりかわいい。世間的にはかっこいい部類に入るんだろうけど、というか写真を見せたら友達もかっこいいと言っていたけれど、ゆうくんはかわいい。純粋な感じがする。


 できたよ、食べよ


 ありがと


 朝のニュースを二人で眺めながら朝ご飯を食べる。口をもぐもぐさせながらゆうくんはトーストを食べている。そんな急がなくてもいいのに。トーストは逃げて行かないよ。前にそう言って笑ったのを思い出す。ゆうくんは年末から3週間ほど日本に戻ってきていて次は春に戻って来れたらいい方。本社での仕事が忙しかったら厳しいだろうから、そのときは私がそっちに行くつもり。大学生の春休みは長いし。昨日そう伝えたらゆうくんは驚いていた。遠いしお金もかかるよなんて言いながらもすごいうれしそうな笑顔をしてるゆうくんを見て、私もうれしくなった。


 おいおうああ


 そう言ってゆうくんは荷物の整理を再開し始めた。私もコーヒーを飲み切ってお皿を流しに持っていって洗う。いつもはもっとゆっくり食べて、そのあとおしゃべりするんだけど、今日は仕方ないか。私は見送るだけだけどゆうくんはお仕事が始まるってことだし、そりゃ落ち着かないよね。


 ん?


 急にこっちを見られて狼狽える。


 いや、何も?


 だってなんかじっとこっち見てるから


 さみしいなって思って


 僕もだよ

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