瞼の裏に君

 いつでも目をつむると瞼の裏には君がいるんだ。


 ぱっと思い浮かぶのは君のきれいな黒髪。つやがあって手入れを毎日欠かしていないってのがよく分かるよ。その次は髪のにおい。ただのシャンプーのにおいだって君は言うけど本当に心地いいにおい。そして細い首。白い肌が黒髪と見事なコントラストを成してて息を吞むよ。それに華奢な肩。細い首と一緒で折れそう。見てて心配になるよ。だから抱きしめたくなるんだね。体は全体的に細くて、脚は本当に細い。こっちも折れそう。ご飯食べてるって言ってたけど、抜いたりしてるんじゃないの?心配なんだよ。顔についてコメントはないのかって。ちょっと待ってね。眉毛は丁寧に整えられてて目は月並みな言い方だけどパッチリ。黒目が黒すぎて嫌って言って始めたカラコンも似合うの選んでるなぁって思うよ。黒もいいと思うけどな。唇もホントに魅力的。奪いたくなるけど恥ずかしがるんだもん。とりあえずお預けかな。


 君のことをこんなに考えても会えない。だけど考えるのをやめられない。冬にしてはあたたかいとき。寒いのが苦手な君は喜んでるかな。雪がちらちらと降ってきたとき。積もるかなあ。積もったら一緒に何して遊ぼうかな。みかんを食べながら白い筋はきっちり取るタイプかなあ。冷たい夜の星がきれいなとき。夜空見上げたりするのかなあ。


 こんな風にいつも日常の中に君がいる。今日はこんなことがあったよ。雪が降ってきて嬉しかったんだけどそんなに積もんなくてさ。雪だるまがんばってつくろうとしたけど手のひらくらいのしか作れなかったんだ。昨日はあったかかったからびっくりしたよ。まさか今日は雪が降るなんて。お昼ご飯はお餅。我が家では好きな個数焼いてきな粉かあんこで食べるのが習慣なんだけど、どっちが好き?あんこの方がおいしいと思うんだけどなあ。


 こうやって話しかけると君はなんて返してくれるだろうか。雪かあ、見てみたいな。積もらなかったのは残念だけど、それでも雪だるま作れたのすごいね。写真は撮らなかったの? 残念だなあ見たかった。うん、確かに寒いのは苦手。暖かい格好して過ごしてね。健康が一番だよ。みかんの筋は取らないよ。あとお餅はね、しょう油で食べるのが好きかな。でも今度食べる機会があったらあんこ試してみるね。甘いのも好きだから。


 いつでも目をつむると瞼の裏には君がいるんだ。


 いつまで経っても会うことはできないけれど確実に君との思い出は増えていってるよ。君との会話を時間を生活を思い浮かべて日常を過ごすのが楽しいんだ。

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