免罪符的効果?
ごめんね
自分が打った4文字を見る。この言葉を見て心に余裕があるときは、というか心が疲れていないときは、ごめんねは漢字で書くと「御免ね」となることからも分かるようにどうか許してくださいっていう意味。すみませんの方が「(私がやってしまったことは)済みません」って意味だからより謝っている表現なんだよね。なんて思うことができる。でも今はあいにくそんな気分じゃなかった。
相手に対して申し訳ない気持ちになってどうしようもなくなったとき、ごめんねというこの言葉で自分の気持ちが軽くなる。謝った。これでとりあえずなんとかなる。自分がしたことに対して償いができた。許してもらえるかは別だけどと思いながらも心はすっきりする。それと同時に自分と相手の間に壁が、上下関係ができてしまったことも感じる。自分が
こっちこそごめんね。
返信が来た。謝られてしまった。この返しが一番きつい。気まずさを感じる。袋小路に追い詰められたとかではない。誰もいないと思った曲がり角からふと昔の知り合いが出てきてしまったような感覚。誰も望んでいなかった展開。謝ったのだから水に流してくれればよかったのに。もしくは別の話題を始めるとか。とはいえ自分も相手から謝られたら私も悪かった、ごめんって打つことが多いから何も言えない。
こんな風に私たち二人の会話では謝罪の応酬がときたま現れる。どっちが悪いか明らかだったらこんなことにはならないんだけど、そうじゃない場合が私たちには多いのか、このパターンが多い。二人とも居心地の悪さを覚えてはいるんだけど謝ってしまう心理。どうにかならないものだろうかとは思うもののどうにもならない。ごめんねと謝ることでそれこそ免罪符を得たかのような気持ちになる。おそらく効果はないだろうけど気休めに――なんて思って縋ってしまうところも免罪符と相通ずるものがあるかもしれない。こんなことを言うと敬虔な信者に怒られてしまうだろうけど。
謝らないで ごめんね あんなこと言って
こっちこそごめん。強く言い過ぎた。
結局、こんなやり取りが続いた。とりあえずここで会話は途切れた。
ごめんね。ごめん。本当にごめんなさい。たとえばこうやって口に出してみると、段々と実際に自分が謝るべきことをしてしまったという感覚に陥るから不思議だ。なんかこう惨めな気持ちになって居ても立っても居られなくなる。ああ、本当にごめんなさい。ごめんなさい。生きててごめんなさい。ごめんなさい。何とかして償います。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます