プツン、サー
はあ。やめてほしい。急に来るの。
気を抜いているときに。いつも来る。
なんか今日。気分いいな。上手く行ってるな。
やりたいと思ってたこともできた。
会いたい人にも会えた。
ご飯もおいしかったし、そういえば早起きもできた。
中々いい感じじゃないか。
ん。なんだ。これは。嫌な気分になりかけ。
きれいな水の中に黒インクをほんの少しだけ落としてしまったような感じ。
本当にほんの少しだから言われるまでは気づかない。
でも言われると。ここに黒色が入ってない?そう言われると、意識し始めると、どんどん黒色が目立つ。
黒。黒。黒。
言葉にすればするほど黒が目立つ。
自分の心に浮いているこの黒色がどうして生まれたかは知らない。
だって別に今日は嫌なこともなかったし。
どちらかと言えばうれしいことがあった日だった。
まだ一日は終わってないけれど、そう結論づけていいと思える日だった。
はずだった。
でもどこかいやな感じがする。
体を小さな虫が這っている感覚。
ほんの小さな虫によって体のバランスが崩されるみたいな。
気持ち悪くてしかたない。血の気が引く音が聞こえてきそうだ。
なんでなんでこんな気持ちにならないといけないの。
心の中でそう問いかけながら別のことを考えようと頑張る。
自分にいいことが無いときは他の人について考えるのが一番だ。
こういうときに他の人と抽象的なアプローチをしつつも最初に思い浮かんでくるのがいつも同じ人。
だってこの人が幸せならそれで、もう、十分、なのだから。
きらきらした目。うなずくと一緒に揺れる前髪。笑うと見える白い歯。
ああ本当にきみは幸せそう。
幸せそう。
幸せそう。
よかった。よかった。
もう死んでもいい。
きみが幸せだと分かったのなら。
私は幸せ。
きみは幸せそう。
きみは幸せそう。
きみの周りにいる人たちもみんな幸せそう。
元々明るい人たちだったのかもしれないけれど、きみと同じ雰囲気の明るさがある。ということはきみから影響されたのだろうか。
きみの周りにいるのは幸せそうな人ばかり。ということなら私にはやっぱり資格がない。
はじめから持っていなかったチケットをまるで持っているかのように力強く握った右手の中に確認する。そこには何もない。
すでにきみが居るのも私の頭の中だけ。
いいんだ。何でも。何でも。きみが幸せならそれでいい。
でも物語の登場人物がみな等しく屋上に上がって花火を見るのと同じように、私も打ち上がるきみの笑顔をもっと近くで見ていたい。
もしかしたら、こんな思い出の皮を被ったどす黒い感情が少し漏れ出てしまったのだろうか。醜い私の中から。
もしそうだとしたら身から出た錆で自分の気分が害されているなんて、笑っちゃう。
笑っちゃう。
笑っちゃう。
笑ってないと到底やっていられない。
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