トレーラーに積み込みバイト

 バイトに来た。今日は積み込みのバイト。初めてだからよく分からないけど集合場所に着くと派遣元の軽が現場まで送ってくれた。着いたのは少し田舎の物流センターみたいなところ。駐車場とは別に車が入れる広いスペースとそこに面した倉庫がある。現場監督のところに行って説明を受けていると、さっき軽で乗り入れた門から大きなトレーラーが入ってきた。そのままトレーラーは倉庫の搬入口にピッタリと後方を合わせて停車した。オーライ、オーライの誘導もなくてまるで搬入口——といっても壁が一部分無くなってるだけだが――に吸い寄せられているみたいだ。

 作業内容はシンプル。社員さんがリフトで倉庫の中から運んできてくれる段ボールに入った商品をトレーラーに積み込んでいくだけ。僕ともう一人の派遣さんはトレーラーの中に入って一つずつ端から順に積み上げていく。僕は右端からもう一人は左端から段ボールを置いていく。今日の作業は昼過ぎから始まって夕方6時までとなっている。さっきの現場監督の話だとこのトレーラーを満杯にしたら終わりということだった。

 ええと、まずは食器用洗剤の箱。重い。まあ、そりゃそうか。これ一箱に何十本と入ってるんだもんな。トレーラーの中までリフトとかで商品をこちら側に寄せてくれるとは言えど真ん中あたりから端、つまり運転席の後ろ側にあたる部分まで運んで積むのは大変だ。それに天井に届くか届かないかのギリギリのところまで積まないといけないから、どんどんしんどくなる。そこまでパンパンに詰めないと必要な分量が運べないのだという。重量制限ギリギリを攻めているらしいけど。上に持ち上げるのはやはりしんどい。まだ作業を始めて30分も経っていないというのに汗はかくし、腕はしびれるしで大変。やっぱり時給がいいのには理由があるんだな。段々そんなことも考えられなくなってきた。

 休憩。まだ一時間しか経ってないとは思えないほどの疲労感。もう一人はこういった類の仕事は初めてじゃないらしく涼しい顔をしている。でもなんでこんなに疲れるんだろう。これくらいの力仕事ならやったことがないわけでもないし、高校時代の部活の方がよっぽどキツかったはずなのに。持参した水筒は倉庫の中に置きっぱなしだから一旦トレーラーから出る。ふっと顔を上げて気づいた。僕たちはどれだけ荷物を積んだのだろうか。自分たちからは頑張って積んだ段ボールの壁のせいで運転席までの距離が分からない。だからか、疲れたのは。達成感が湧かないからか。じゃあトレーラーの後ろの扉との距離で考えればいいのか。積み込みが終わるころには扉がすぐ背中の後ろに来ているはず。疲れている割には名案だった。


 その名案のせいで僕は気づいてしまったけれど。このトレーラーは成長している。僕たちが段ボールを積むスピードに合わせて後ろ側に伸びている。そして積み終わった前方からトカゲのしっぽのように切り離されていくのだ。道理で6時近くになっても終わらないわけだ。まあ成長するトレーラーが来る倉庫の掛け時計なんて信じられないけど。

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