ショートスリーパーの秘密

 いつ寝てるんだろう?と思いたくなるような人というのがいる。大体そういう人は4時間睡眠くらいで僕には考えられない。こういう寝るのがちょっとだけでいい人をショートスリーパーというらしい。反対に僕はロングスリーパー。体質の問題だからとは言うけれど、できることなら僕も睡眠時間は短く済ませたい。

 僕の身近なショートスリーパーといえば父と母だ。体質の問題だというんなら僕に遺伝しててもおかしくないと思うんだけど、そんなことはないみたい。父はいつも朝早くから出勤。帰りは大抵22時を過ぎるし、その後からお風呂、ご飯、そして趣味の時間を過ごしている。

 父の趣味は書斎でテレビを見ること。録っておいたドラマや映画を見ているみたい。ドラマなら何回分かをまとめて見ることも多いらしいし、映画もまるまる一本見終えることが多い。母も父と一緒に夜中に映画を見たりするけど、僕のお弁当を作るために毎朝5時半起きだと言っていた。

 僕もそうなりたいなぁと思って母に聞いてみると、別に私が頑張って早起きしてるだけよと言われた。うーん、そういうことじゃないんだよな、頑張っても僕には無理だし、母も頑張りだけじゃない感じがする。それを聞いていた父が大人だからだよ、俺も中学のときは今のお前みたいに寝てたよ、別に。大人になってからだな、今みたいな生活リズムになったのは。中学生ってそんなものだろ。と横から言ってきた。確かにそうなのかも。でも、クラスメイトにはショートスリーパーもいるんだよなぁと思いつつ、とりあえず頷いておいた。

 前野は野球部で2年生なのにスタメン入りしている。野球部には朝練もあるし放課後も暗くなっても練習している。しかも、あいつは一年のときから高校受験に向けて塾にも通ってる。しかも色々あって遠いところから通学してるから、通学にも僕の十倍くらいは時間がかかってるはず。だから絶対、前野もショートスリーパーだ。そう思って聞いてみると朝は5時に起きて日付が回ってから寝ているらしい。やっぱり。じゃあ子どもか大人かなんて関係ない。なんでなんだろう。なんで前野はちょっと寝るだけで良いのに、僕は無理なんだろう。

 そう思って思い切って聞いてみた。なんで、そんな短い睡眠時間で何とかなるの。そう聞くと別に何もないよ。慣れただけ。そう言われたけど、何となく食い下がってみたら言いづらそうに教えてくれた。


 年取ったあとの睡眠時間をもらってんだよ。


 え。


 だから、おじいちゃん、おばあちゃんの中には夜眠れないって言ってる人がいるだろ。あれは若いときに睡眠時間を前借りした人たちなんだよ。俺もそのやり方を教えてもらったんだよ。それでその通りにしたら成功したってわけ。教えようか?あんま人に言うのよくないんだけどさ――。

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