豪勢なオムライス

 外食をするとき何を食べるかどうやって決めるだろうか。もちろん、お好み焼きが食べたいなあ、といった感じで目的が決まっていてお店を考えるという場合もあるだろう。でも、家に帰っても何も無いしとか外でまだ用事があるから外食しようとかいうこともあると思う。そういうとき、僕はよく家で食べれないものを、作れないものを食べようと思う。例えば外国の料理。カオマンガイとかヤンニョムチキンとか。何ポンドのTボーンステーキなんかも家では食べれない。

 でも他に家で作れるけど、外で食べたいなんてものもある。僕はその代表格がオムライスだと思う。だって中々上手に作れないんだもの。ご飯に鶏肉、玉ねぎ、ピーマン、人参なんかを入れてケチャップと塩コショウで味付け。卵で巻いてケチャップやホワイトソース、もしくはデミグラスソースなんかをかけて食べる。思い浮かべただけでも食べたくなる。

 まあ、この工程のどこが難しいかって卵の部分に決まっている。しかも、大した技術もないくせに卵をケチっちゃったりして。一個や二個で素人が上手く巻けるわけがない。そりゃあそうだよな、そう分かっていてもなんとなく躊躇ってしまう。平社員の貧しい考えなんてその程度。そんな気持ちで卵が若干さびしい感じのオムライスを食べながらテレビを見ていると、伝説を探し出せ!というよくある怪しげな海外ロケに行く番組が始まった。いつもはこういうのは見ずに国内のグルメを紹介するような番組を見るのだけれど、今日は違った。


 幻の鳥 ロック鳥を追え!!


 ロック鳥、なんか聞いたことあるような無いような名前だな、と思っていると、いかにも勿体ぶった口調のナレーションが始まった。

 ロック鳥は幻の大きな鳥。象をも持ち上げるとも言われており、過去には巨大な羽が見つかったこともある。ダチョウみたいなものかなと思っていると、高さ3.5メートル、体重500キロだという。なんかもう想像がつかないな、そう思っていると画面が切り替わり大きな楕円形のものが映し出された。


 その卵は鶏卵おおよそ200個分!


 そんなテロップとともに実際のにわとりの卵と比較された模型が出てきた。でかすぎる。大体ダチョウの卵を見ても大きいと思うのに。長径は35センチくらいでダチョウの卵の2から3倍はあるというから驚きだ。いつの間にか僕はスプーンの手を止めていた。テレビからはかつてはマダガスカル島やオーストラリア西部で見つかったとの報告もあり――。


 段々とテレビの音は僕の耳には入らなくなっていた。代わりに頭の中を閉めていたのは巨大な卵で作ったオムライスだった。ふんわり、とろーりな巨大オムライス。いつものオムライスがゴマ粒に見えるほどの超ド級のオムライス。食べたい。たった一個でさぞ豪勢なオムライスができるはずだ。いっそのこと会社やめて伝説を追いに行こうかしら。

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