ハロウィンと仮装

 今日はハロウィン。街を紫と黄色が覆っていく。トリック・オア・トリートという言葉が飛び交う。実際にいたずらをされたことなんてないけれど、なんとなく個包装の飴やチョコなんかを持ち歩いたりしてみる。こうやって人にお菓子をおねだりしたり、人にお菓子をあげたりするのはハロウィンの醍醐味だ。

 でも、もっと大きな醍醐味がこの行事にはある。最近はだいぶ文化として浸透してきたみたいで、子ども会のイベントになっていたりもするし、もちろん繁華街なんかに行けばそこかしこでそれを楽しむ人たちを見ることができる。


 そう、それは仮装。


「やったー。ハロウィンだー。私この行事が一年で一番好きかも」

「ホントに?肝試しのときもそんなこと言ってなかった?」

「やめてあげなよ。この今が最高!みたいなのがこの子のいい所なんだから」

「たしかにそうかもね。でもなんでそんなにハロウィンが好きなわけ?」

「えー、二人も分かってるくせに。だって、はっちゃけられるじゃん一番。多少のことなら無礼講って感じだし」

「それを言うなら年末じゃない?」

「まあまあ、この子相手にそんな細かいこと言っても無駄よ。でもたしかに自由になれるって感じはするわよね」

「でしょでしょ」

「まあでも羽目を外しすぎないことね」

「そうだよDJポリスなんかのお世話になっちゃいけないよ」

「それにお酒も飲み過ぎないのよ」

「分かってるって。酒は飲んでも飲まれるな、でしょ?」

「なんでそんな言葉知ってるのよ。まあでもその通りよ」

「私その言葉、初耳。飲み過ぎるなってこと?」

「まあ、そんなところね。飲み過ぎて我をう―—」

「それにさ」

「ちょっとは人の話聞きなよ」

「まあいいわ。それに何?」

「なんかみんなで盛り上がれて楽しくない?みんなおんなじ格好みたいな」

「たしかに全く同じとはいかないまでも、魔女とか骸骨とかドラキュラとか死神とか、なんとなくテイストはみんないっしょだもんね」

「そうね。ピエロとかもいるかしら。まあちょっと考えれば、文化のごった煮なのは分かるけど、楽しいのに変わりはないわ」

「それにさ、最近キョンシー増えたよね」

「うん!私もそんな気がしてた!だから最近はそれもあってすごい楽しみなんだよね。ハロウィン」

「たしかにね。仲間が多いってすごい安心するしハッピーな気分になれるわ」

「じゃあさ段々暗くなってきたし、そろそろ外に出ない?」

「うん!そうしよう!」

「外には気を付けるのよ」

「分かってるよ。私そこまでお子ちゃまじゃないもん!」



 3人は仮装をせずに街に繰り出していった。

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