病んでるってどんな状態?

 「なあ、長山、病んでるってどういう状態を言うの。友達が病んでるって言ってるんだけど」


 「えっとね」


 「病むっていうのは自分の心が暗くなって沈んでしまって、そのまま体ごとどこかに沈んでしまいたくなることだよ。もう死んでもいい。早く死にたい。誰か殺してくれ。この世に居たくない。早く殺してくれ、みたいな。穴に落ちたい。この脳の思考を止めてしまいたい。何も考えたくない。いいことも悪いこともいらない。何もいらない。早く消えたい。どうせみんな俺のことをバカにしてるし、自分のことなんてどうでもいいし、どうせ自分のことを気にかけててくれたとしても、それは自分の思いとは釣り合わない。大切なものから人生では消えてってしまうみたいだから、それなら大切なものなんて初めからいらなかった。何もいらなかった。あんな感情覚えたくなかった。本当に消えたい。過去を懐かしんでもどうにもならないと分かっていても過去に戻りたい。やり直したい。やり直したい。やり直したい。今なんてどうでもいい。かといって未来にも希望なんて抱けない。何も待ち遠しいことがない。死にたい。でも死んだら人に迷惑がかかる。生きてても自分にはいいことがないし、決して前向きにはなれないけど、死んで誰かに迷惑がかかるなら、それはそれで避けたい。いらない。自分がいらない。もっと自分が脆弱なつくりだったら、ちょっとジャンプすれば壊れるくらいのつくりだったら便利だったのに。簡単に死ねるのに。いいことなんて過去にしかなかった。今は絶望とまではいかなくても暗い気持ちにはなる。絶望も絶望でずっと絶望の底に沈んでられたらいいのに、微妙にいいことが舞い込んできたりする。それは縋るには不十分であやふやで、それでも少し死ぬことに対して、ためらいを持たせるくらいの効力はある。心に降る雨が一生止まなかったらいいのに、なんて思うことはしょっちゅうで、満たされないと漠然と感じつつも、満たされた状態の定義すら十分に答えられない自分にこれでもかと嫌気が差す。幸せになりたいと言いつつも、自分がどんな時に幸せを感じるのかは今となってはもう不明瞭。ただ、過去のことを夢に見たときには幾何か心が安らいでいる気がする。だから早く寝ていい夢をみたいと思うのだけれど、そんなときに限って現実みたいな夢を見て後悔したりする。良いことと悪いことは交互にやってくるなんて言うけれど、良いことは一瞬で消え去って、悪いことは半永久的に心にべったりとくっついて離れない。だから生きてても嫌なことばっかりだって感じるんだ。そういう理由が分かってても嫌なことばかりの今が嫌になるし、そんな悲しい考えしかできない自分が厭になる」


「みたいなことを病んでる人ってのは考えるらしいよ」

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