「うんうん」(まあ、どうでもいいけど)

 山本ミチは友達のエリカと一緒に学校から歩いて帰っている。エリカはおしゃべり好きである。


「でさ、バイトの先輩がマジ、うざいの」

「そーなんだ。どんな感じの先輩なの?」

(いや、マジで興味ないわ、エリカの部活の話、違ったバイトの話)

「なんて言うんだろ、いちいち、うるさいっていうか」

「あー、それはめんどくさいかも」

(大体、うるさい人って面倒くさいよね。意味のない相槌)

「そーなの。この前はフェイスアップの仕方、教えてもらってないのに下手とか言ってきて」

「教えてもらってないのに、かぁ」

(オウム返しするだけ。っていうかフェイスアップが誰にでも通じると思うなよ。通じたけど。あれでしょ、棚とかに並んでる商品を前の方に出して整えて、お客さんが手に取る可能性を高めるみたいなやつでしょ)

「あっ、フェイスアップっていうのは商品を手前に出すみたいなやつね」

「あー、そういうのも仕事なのか、大変だねぇ」

(フェイスアップの補足わざわざありがとう。補足するくらいなら最初からそう言えよ)

「そうなのマジ大変。あっ大変と言えばさ」

「うんうん」

(多分、先輩も大変なんだと思うよ。色々と。それにエリカみたいな後輩の指導もしないといけないし)

「今度、歯医者さん行かないといけなくなったんだよね」

「歯医者さん怖いよね」

(大変って言うからなんか大ごとかもって思ったじゃんか。歯医者か。どうでもいい)

「そう怖いの」

「ね、怖いよね」

(情報量無いなあ。エリカの話、薄すぎる。じゃあ、仕方がないから)

「そういえばさ、明日の英語って小テストあるっけ?」



佐藤エリカは友達のミチと学校帰りおしゃべりをしている。ミチは私の話をよく聞いてくれる。


「確かあった気がする。でもミチなら楽勝でしょ」

(って言ってほしいんでしょ)

「いや、楽勝じゃないよ。範囲って言われてたっけ」

(話逸らすの上手じゃん、ミチ)

「確かね、パート2と3じゃなかった?」

「あーそうだったかもありがと」

(その言い方は多分、元々知ってて確認したね、私に。まあ範囲の話はもういっか)

「小テストなんか難しくない?2年になってから」

「思った~。例文とかも出るようになったし」

(とか言いながら毎回満点でしょ。ミチは)


「でもさ、相変わらず笹野くんは満点ばっかりなんでしょ」

(笹野くんってのはミチの好きな人だ。敢えて話題に上げてみた。やっぱり勉強できる人は勉強できる人を好きになるものなのだろうか)

「私もそうやって噂で聞いた。すごいよね、毎回満点って」

(まあ私も毎回満点なんだけど。エリカはそのことを知らないんだろうか)

「うん、すごいと思う」

(エリカが思ったより素直な反応をしてくるので少しびっくりした。エリカも笹野くんに気があるのだろうか)

(まあ、こうやって笹野くんのことを褒めておけばミチも気分がいいだろう。誰だって自分の好きな人が褒められるのはうれしい)

「あっ、あれ笹野くんじゃない?」

(ほんとにラッキーだ笹野くんに会えるなんて。エリカと一緒に帰ってよかったと思うのは初めてかもしれない)

(よかったじゃん、ミチ。笹野くんに会えて。めずらしく声がちょっと高くなってるし、分かりやすい)


「あっ、山本さんと佐藤さんだ。おーい」

(こうやって愛想よくしてればいいんだろ。それにしてもあの二人、腹黒だな。まあ、僕も人のこと言えないけど)

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