巷で噂の●●●●について

 ●●●●という名前が最近話題によく上がる。●●●●という表記が合っているのかは分からない。みな口に出して噂するだけで文字に起こすことはしない。もしかしたらこの書き置きも抹消されてしまうかもしれない。●●●●でよいのか、彩文、祭文、西門、斉門、柴門、才門、西紋、Simon、Cymon、いろんなパターンが考えられる。それにこの●●●●というのが個人名なのかも分からない。もしかしたら何かしらの機関の名前かもしれないし、複数人で同じ名前を引き継いでいるのかもしれないし、もしくはオリジナルと模倣犯的なものがいるのかもしれない。もちろん性別や年齢なども分かっていない。

 ●●●●について分かっていないのは中身だけではない。それがやっていることも分からない。暴力団のようなことをされたという報告がどこそこで上がっただとか、ここ数年の株価の変動のバックにいるのは●●●●を名乗る機関だとか、陰謀論者に崇められている特別な存在が●●●●だとか、石油の元締めが●●●●だとか、大国の為政者と電話一本でつながれるのが●●●●だとか、権力者専門の情報商材屋だとか、本当にありとあらゆる噂が流れている。どれもありえるようなありえないような話である。

 さすがにこれほど●●●●熱が高まって来たころ、これまた、まことしやかな噂が流れ始めた。●●●●に実体はない。ゆえに中身も生業も分からない。実際は世界の色んな分野の荒くれものがネームバリューがほしくて、もしくは威厳が欲しくて●●●●を語っているのではないか、というものである。確かにそうすれば多種多様な仕業にも説明がつくし世界中でその活動が見られるというのも頷ける。それに、●●●●絡みとなれば界隈は少し腫れものに触るような形になり、刺激を避け黙認というような態度をとるようになっている。この説は現在、支持されつつある。

 しかし、ここまでが●●●●の計算通りなのではないか。こうやって実際は存在しないという説を広めることでそれ以上の追及を逃れようとしているのではないだろうか。たしか情報屋みたいな活動内容も囁かれていたのではないだろうか。実際、●●●●そのものを怪しむ向きは最近減ってきた気がする。まあ、俺の周りのものが信用できるとは限らないが。


20XX.3.31

速偵班、初動検閲終了。人物特定についてはプロファイリング班に依頼済み。

20XX.4.2

プロファイリング班、人物特定終了。処置判断については裁量班に依頼済み。

20XX.4.5

裁量班、処置判断終了。実行については制裁班と調整中。

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