心当たりのないダイレクトメール
ご苦労なことだ。青年が家の郵便受けの横で郵便を待っている。ここら辺の配達は大体午前11時過ぎだというのを知らないのだろう。おそらく朝からずっと立ちんぼだったであろう青年はいくつかのダイレクトメールを受け取った。
大学生の夏休みは自由時間に満ちている。もちろん自動車学校や週3のバイトなどはあるのだけれど、それでも時間はある。だから最近、海外の新聞をネットで読んだりしていた。人に誇るほどではないが英語力はある程度あったので不自由はしなかった。そして数日前にアメリカの新聞を読んでいた時、FBIに関する記事が目に留まった。最後まで読んで今日はこれくらいにしておくかと思ってタブを閉じようと思ったとき写真に違和感を持った。記事にはFBI本部の写真が載っていたのだが何かそこに不自然さを感じたのだ。だからその写真を新しいタブで表示させて10倍くらいに拡大してみるとうっすらと文字が重ねてあることが分かった。よく見るとメールアドレスのようなものだった。何の悪ふざけかと思ってそのメアドをコピーしてネット検索にかけてみたが、何もヒットしなかった。怪しい。だってこんなにネットが発達し情報が氾濫している昨今、一致した検索結果が出てこないというのは不気味だ。それにメールアドレスだから企業のものとかだったら公式ホームページにでも書いてあるだろう。
と思ったがよく考えてみればこのメアドはFBIの写真に加工されたものだったのだ。写真がFBI提供であれば彼らがその加工を施したことになるし、誰が準備したにしろ新聞社で発行前に加工をすることは容易だ。まあ、何にせよ面白そうだしと思って適当なメアドをつくってメールを送った翌日、返信が来た。その内容をざっくり訳せば、君の能力を見込んだ。君の住所に君の名前宛てでダイレクトメールを送った。それらしい内容にしておくから心当たりのないダイレクトメールが届いたら我々からだと思ってくれ。明後日には君の家に着くようにする。こんな感じだった。住所を教えてもないのにバレているということは新聞社ではなく、、、。
ということで僕は警戒しつつ郵便を待っていた。一人暮らしだったら誰かに郵便物を見られるという可能性は低いから誰よりも先に受け取らねばと焦ることはないのだけど、実家暮らしだとそうもいかない。だから適当な嘘をついて今日は朝からこうして待っている。
ご苦労なことだ。青年が家の郵便受けの横で郵便を待っている。おそらくこの一見自然なダイレクトメールを待っているのだろう。まあ、中身は私がもうすり替えたが。最近FBIが人材を日本で物色しているというのは当方にも流れてきた話だった。私は板についてきた郵便配達の仕事を全うし、青年にいくつかの郵便物を手渡しした。
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