頭痛が痛い

 頭痛が痛い。最近この表現に慣れてきて「頭痛がする」か「頭が痛い」が正しいとかどうでもよくなってきた。そして何よりいま頭痛が痛い。個人的にはズキズキのパターンと重いパターンがあると思うのだが、今回は重いパターンだ。調べてみると頭痛が起こるのは血管が異常に拡張したときという説があるらしい。だから血管が収縮していくイメージを思い浮かべたりしてみるが当然効果はない。仕方ないからあいつを呼ぶことにした。



 サリーおいで。

 こんにちは。ちょっと妖精使いが荒いんじゃなくて。

 ごめん、サリー。今ぼく頭が痛いんだ。何とかできないかな。

 あら、「病人は大切に」が我が一族の十戒の三つ目ですの。その後は、「冷やし中華にマヨネーズは厳禁」「スヌーズ機能は心の緩み」「とりあえず相槌を打つ」、、、

 ごめんね頭痛が治ったら聞くから。いや、聞かないかもしれない。それにラインナップがおかし、痛っ。

 あら、大丈夫ですの。

 いま、絶対サリーなんかしたでしょ。タイミングが良すぎる。ちょっとディスっただけでなのに。

 で、どうしてほしいんですか。

 あ、はい、すみません。頭痛を治してほしいです。

 最初からそう言えばよいのに。痛っ。

 じゃあ、ベッドに寝ててくださいね。目が覚めたら治るようにしておきますので。

 ありがとう助かるよ、サリー。きみはぼくに無くてはならない存在だよ。


 さて、ベッドに入ると心地よい眠気が襲ってきた。やはり上級を呼ぶとなるとそれなりに力を使うが、その分彼らの力も大きい。サリーもやはり実力は申し分ない。少し性格に難ありな気もするが、痛っ。おとなしく寝ることにする。



 ―—なんてことがあればいいのに。実際は寝る暇すら無い。たとえ、こんな空想をしたところで何も解決はしないのだけれど、何も考えないで痛みだけに意識が向かうのも考えものだということでこうしているのである。頭痛の原因をもう一度考えてみる。睡眠不足、スマホの見過ぎ、雨で濡れたこと、うるさい言い合い、やることが多過ぎてキャパオーバー。心当たりはたくさんあるが、やはりこれらに加えて精神的な悩みがあるところが大きいだろう。まあ、こうやって一人で考えてもどうにかなるわけはないのだけれど。仕方がないのでサリーに電話を掛けることにした。



 あっ、サリー?ぼくだけど。

 うん、分かってるわよ、表示出てるんだから。あと、そのあだ名使ってるの今じゃきみだけだよ。

 嫌?

 別にいやじゃない。

 じゃあ、よかった。でさ、サリー今ぼく、、、。

 分かってるわよ。先生から聞いた。それで今、スーパーにいるから家、寄るわね。何か食べたいものとかある?

 たまご。

 分かったわ。じゃあもうちょっとしたら着くから。前もらった合鍵もあるから寝てていいよ。

 ありがとう。


 頭痛が徐々に消えていく気がする。

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