待望の三人暮らし

 僕は大学生。一人暮らしだ。家はそんなに狭くない。二人なら余裕、三人でもオーケーという感じだ。


と、そんなことを思っていたらシェアハウスをすることになった。高校の同級生二人を招き入れた三人暮らしが決まったのだ。二人とも僕と同じで上京していたから、二年生に上がったタイミングで二人もそれぞれ家を解約して一緒に住むことになったというわけである。


 広宣は少し神経質なところがあるが基本的には世話焼き。マサほど社交的なわけではないが、僕ほど内向的なわけでもない。基本的に家事は何でもできるし自分でできることは自分でやりたいとよく言っている。特に食にこだわりが強いから大体のご飯は広宣がつくってくれる。それに対してマサと僕は食にとんと興味がなく一人暮らしをしていたときは栄養補助食品やらカップ麺やらで済ませていた時も多かった。マサに関しては三食食べる日の方が珍しかったなんて言うから驚きだ。なんだかマサの悪口ばかりになってしまったが、彼は自由人で甘え上手だ。末っ子というのもあるのだろうか。マサはいわゆる何でもそつなくこなすタイプで、別に僕たちが何もしなかったら自分で動くのだろう。そう感じることが多い。まあ、広宣と僕だけだったらどこか雰囲気が暗くなるだろうから、かけがえのないな存在だ。

 と、ここまで好き勝手に言ってきたが僕のことも話さないといけない。


「広宣ー、僕って家事できる?」

「なんでもできるだろ。現に洗濯は全部お前じゃねぇか」

「料理も上手だしね。広宣がいないとき作ってもらってるけど」

「おい、錬、初耳だぞ。俺にもなんか作れ」

「えーでも、今日は広宣の天ぷらでパーティーでしょ。よろしく」

「ま、錬は手伝ってくれるしな」

「俺も皿洗いしてますー」

「違うだろ。皿洗いはしてます、だろ」

「ま、広宣いいじゃん。マサの稼ぎが一番大きいんだし」

「それはそう」


 マサはプログラミングができる。例えば数か月前からマサは暇つぶしにソシャゲを一からつくっていた。これが割と好評で結構な額が定期的に入ってくるのだ。そんなやつが何故表計算ソフトや文書作成ソフトが扱えないのかが不思議でならないけど。それにレタスとキャベツの区別がつかないのも意味が分からない。買い物は主に料理をする広宣の担当。日用品の補充のために僕はついていくこともあるが、俺は行かないから仕方ない、らしい。マサ曰く。ちなみに買い物は広宣の唯一の外出と言っても過言ではない。広宣はそこまで内向的ではないが引きこもり傾向はある。こんなことを言ったら、お前に言われたくないと言われそうだけど。


 このちょっとしたやり取りだけでも三人の性格や関係性が如実に表れてると思う。やっぱりよく知った仲、気の置けない仲というのはいいもんだ。一人暮らしはやっぱりさびしい。

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