大切な人
もう、20代も半ば。少しは人生経験を積んできた。まあ、まだ若いということを利用していきたいところではあるけど。それに、数人は大切だなぁ、と思う人にも出会ってきた。恋愛的に見てもそうだ。結局は自分の思いがふわふわしてしまっていて、誰が好きなのか、とは決められず今に至っている。昔の人が忘れられないというのもあるし。ある日、会社で昼食中にテレビをぼーっと見ていたら、「今話題‼大切な人が分かっちゃう占い」と紹介されている占い師の特集をやっていた。画面を見ているのがばれたのか、同僚に、案外占いとか興味あるんですか、と聞かれた。この人のことも気にならないわけではない。まあ、そんな中途半端な気持ちは迷惑でしかないが。うーん、まあ。とパッとしない返事をしたら、この人、近々このあたりに来るらしいですよ、らしい。そうなんだ、と気の無さげな返事をしながらも、いい機会じゃんと心の中では思っていた。
本当だ。来週一週間は近くの大きな駅の辺りに来るらしい。簡単なテントみたいなものを立てて。しかも、この占い師さんのすごいところは別にお金を取らないところ。どんな占い方法なのかは明かされてないらしい。それに、かなり短時間で終わるから行列にもならないらしい。まあ、細かいことは置いておいても、ちょうど水曜に泊まりの出張があるから、ホテルのチェックインの前に寄ってみよう。割と夜までやっているらしいから、多分大丈夫だろう。
占いとかはあまり信じない方だ。地球上の人を12種類に分けるとか雑すぎると思う方の人間なのだ。それでも、別にお金も予約もいらないし、仕事ついでに行けるのだから、デメリットはない。そういうことを考えていた。それでも、自ら占ってもらいに行くとか普段の自分なら考えられない。そう思うと、やはりあの時は恋愛に思い悩んでいたのだろうか。あの占い師に言われたことはあまり占いと呼べるものでもなかったし、確かにお金を取ると言ったら、微妙な反応をされるものだった。それでも、すごい核心をつかれたような気がしたし、何より、あの言葉は今も効果を持ち続けている。だって、これからの一年はこんな年になりますね、といったような類のものではなかったのだから。あの時のことを思い出す。
こんばんは。あの、今日は、、、
はい、お掛けください。大切な人占い、ですかね。
はい、そうです。
分かりました。じゃあ、いま、入ってきた入口の方を向いて座りなおしてください。
はい。
では、「あなた」か「きみ」か、どちらかよくお使いになる方を声に出して呼び掛けてみてください。
はい、きみ。
終了です。いま、言いながら、誰かの顔が浮かびませんでしたか。その人がご自身の大切な人です。
あっ、、、。分かりました。ありがとうございます。
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