グラデーション

 なんとなく、起きた時間に起きる。授業には間に合う。大学はすぐそこだから。朝ご飯の食パンをトースターにセットしながら、洗濯機を回す。焼けたパンにバターを塗る。溶けていくのを見届けながらリンゴジュースを注いで、適当にテレビをつける。これをなんとなく聞き流していると面白いくらいすぐに食べ終わる。お皿をささっと洗う。歯磨きをしている間に、洗濯機がピーと鳴る。これを聞いたらベランダに干しに行く。授業に間に合うようにマシな服に着替える。

 これが昨日。まあ、今日も一緒だったけどね。多分明日も一緒。一昨日もこれだった。未来は分からないなんて言うけど、そんなことないのでは、と思ってしまう。砂山のパラドックスというのがどうやらあるらしい。砂山から一粒、砂を取る。依然目の間にあるのは砂山。もう一粒取っても砂山。もう一粒取っても砂山。こうやっていくとそこにあるのはずっと砂山。こんな感じで、明日も同じ生活、明後日も同じ生活、その翌日も、、、。っていうのが軽々と成立する気がする。ほんとに多分成立するんだと思う。

 じゃあ、大学を卒業したらどうなるんだろう。就職?それでも、授業が仕事に置き換わるだけで同じ気がする。まあ、その違いが大きいのかもしれないけど。なんかそう考えると一気に未来っていう言葉から輝きが失われた。未来なんて時間が過ぎ去った只の結果なんだ。太陽が何回か沈んだだけ。淡いピンクの花びらが散ったら長雨が続いて熱中症になりかけてたら風が身に堪えてきて結晶が見えた見えないと騒いでたら淡いピンクの花が順に咲いていく。これが繰り返されていくだけ。だけ、だけと繰り返していたら本当に大したことないように思えてきた。今日が早く終わってほしい、そんなことを思いながら、楽しい時間は長く続いてくれ、と思ったり、やることが多すぎる、一日が48時間だったらいいのに、なんて思いながら半年後の予定が立っていたり、もうよく分からない。勝手なものだ。次は冬休みね。と軽く約束をしたあとに長いなぁって思ったりもする。

 毎日が変わらないなんて言ってるけど、時々劇的に変わったりする。でもそれが私に起こることが滅多にないだけ。いつも誰かの日常がガラっと変わっていて、その余波がたまに来たりする。そういうことなんだと思う。変わっていないと思っているときに何かが大きく変わってる。鬼ごっこで鬼をしているとき、追われなくて楽だなんて思うよね。でも、実は鬼の人は逃げている人みんなに目で追われていて監視同然の扱いなんだ。こんな昔の同級生の言葉を思い出した。


 やっと眠くなってきた。じゃあ、おやすみ。

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