ドミノだおし
レジ袋は要らないです。そう言った自分の声が耳の中で反響する。心なしか元気がない気がする。なぜだろうか、でもそう思い始めるとそんな気がしてきた。何が理由なのだろうか。仕事が原因なのか。今日は何をしたんだっけ。いつも通り洋服をお客さんに売っただけだ。確か朝はいつもより早く出たのに、事故があって着くのは結局いつも通りだった。午前中はいい感じだったけど、案の定昼ご飯は時間通りに食べれず午後が始まっていた。そういえばお客さんに粗雑に扱われたっけ。これ、色違い、無いの。こんな感じだっただろうか。そのフォローに入った先輩に少し冷たい目で見られた感じがしたんだった。そのあと、どこか釈然としない気持ちのまま、仕事を続けた。今日は成果としてはいい方だっと思うんだけど、あまり自信は持てなかった。帰りの道中は何もなかったけど、そう、目当ての肉が売り切れていて、たいして安いわけでもないものを選んだ。それで今、運転してマンションに向かっている。信号が青が続くなぁ、いいこともあるじゃん。と思っていたら赤が3連続になった。ついてない。駐車もいつもより斜めな気がする。郵便箱を開ける番号を間違えた。エレベーターは中々来ない。扉を開けると、机の上におきっぱになっているファンデーションが目に入る。しっかり片付けたはずなのに、と思いながら洗面所で手を洗う。同時にシャンプーの詰め替え用を買ってくるのを忘れたことを思い出した。まあいいや、さっさとごはんを作ろう。パスタを茹でる。トマト缶を入れて、小松菜とニンニクを入れたら終わり。ものの数分でできた。おいしい。でも、一人でパスタをくるくると器用に巻いていると言いようもない寂寥感に襲われた。何でだろう、いつもと同じ生活なのに。一人で朝起きて、朝ごはんを食べて、着替えて仕事。持ってきた適当な昼ご飯を食べて、仕事が終わったら帰ってきて晩ご飯を食べる。お風呂に入ってちょっとテレビかなんかを観て、明日に備えて寝る。こういうサイクルをいつも繰り返していたじゃないか。いつも。いつも、これで何ともなかっただろう、私よ。何ともなかったのか、ほんとに。どこかでそうやって強がっていただけじゃないのか。お皿を洗いながら、考える。強がらなくていいんだよ、昔の彼の声が聞こえる気がする。今、聞こえたところでどうにもならないのに。鍋も洗い終わってしまった。まあ、いいや、お風呂に入ろう。そう思ったがまだ、洗濯ものが干しっぱなしであることに気づいた。ベランダに出る。夜が私を誘った。二つ返事で私は体を預けた。
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