ふわふわ不和
「まーくん、きらい。もう嫌っ。」珍しく、沙也加が星川くんの悪口を言っている。いつもはのろけ話ばっかりなのに。こんなことしてくれたとか、こんなこと言ってくれたとか、何々をしてた姿が一段とかっこよかったとか、もう、星川くんの親友くらいには彼のことを知っている。私はほとんど星川くんと話したことはないけど。どうしたの、さやか。珍しいね、なんかあった?私はそうやって聞いてみる。どうせ大したことはないのだろうけど、この沙也加の顔は聞いてほしいのサインだ。
「なんかね、うまくは言えないんだけど、なんていうかな、なんか最近、うん。」思ったより歯切れが悪い。どうせ、プリン食べられたとかだと思ったのに。それでも、なんかうまくいってないっぽいというのは気分のよいものではない。今日は、沙也加の話を聞くことにしようか。そう言うと、沙也加が最近できたコーヒーショップに行こうという。私も行きたかったので早速行くことになった。
「沙也加さんがさぁ。」
「うん。」
「なんかさぁ。」
「うん。」
「えっとね―—。」
「どうした?なんかあったか。嫌なこと言われたとか、嘘つかれてたとかか。あぁ、でも、そんな人じゃないって、雅哉、言ってたか。」
「言った。沙也加さんはそんな人じゃないんだけど、ちょっと前、提案があるって言われて。」
「おお?」
「私たち普通じゃないみたいって言われて。」どうやら話は思いのほか重そうである。でも、もう、校門を出てしまった。話の接ぎ穂を探している俺を見て雅哉が言う。
「そういや、沙也加さんが駅から徒歩5分くらいのとこに、なんだっけ、あのマリーみたいなカフェ、ができたって言ってた。」
「じゃあ、行くか。俺もおいしいブラックが飲みたくなった。でも、雅哉コーヒー飲めたっけ?」
「最近、飲めるようになったんだよ。沙也加さんがおすすめ教えてくれたんだ。」結局いつもみたいに、のろけられた。
『今、沙也加と新しくできたサリーズにいる~』
『俺も、今から雅哉とそっち行く 雅哉が行きたいって』
『え? まあ、わかった! 入って右側のテーブルにいるよ』
『オッケー なんか、彩たちの席、座れそうなら行く』
『わかった 待ってるね~』
歩きながらスマホを見てたら、蓮、珍しいな、歩きスマホなんて、と雅哉に不思議がられた。二人が店にいることを言った方がいいだろうか。なんか今うまくいってないなら、避けるべきか。でも、雅哉はどんどん歩いていく。話の続きをする感じでもないし、仕方ないから、授業の愚痴でも言いながら歩いてたら着いてしまった。
店に入ると、雅哉は真っ先に二人がいるテーブルに行って彼女の向かいに座った。雅哉に手招きされて彩の横に座った。
「あのねー。」沙也加が誰に話すでもなく、話し出す。
「けんかするほど仲がいいって言うけど、私たちけんかしないねーって私が言ったら、まーくんが、してみる?とか言うからやってみたんだけど、うまくいかなかったんだよね。ね、まーくん。」
「うん、まあそういうこと。」雅哉がやりづらそうに俺に言う。
「やっぱり、そういうことだったんだね、蓮くん。」って彩が言う。俺は頷く。
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