崖の前で

サラ、きみはそんな男のどこがいいんだ!今までは何だったんだよ。

フレッド、カルロのことを悪く言わないで。彼は悪くないの。ただ、私が―—

なんで、きみが庇うんだよ、サラ。お前もなんか言ったらどうなんだ、そんな木の陰に立ってないで。ほら。

あっ、はい、フレッドさん、ごめんなさい。僕はでも、別に―—。

何なんだよ、ええと、カルロだったか、おい。だって、今、きみら、いい感じなんだろ!それなら、そう言ってくれ。言ってもらえたところで、どうするかはまだ決まってないが。

えっとね、フレッド。私、あなたがいないときに気を紛らわそうとしてカクテルを飲みに行ったの。そしたら、彼がいて、話を聞いてくれたの。楽しいことも悲しいこともずっと聞いてくれたの。

僕は大したことはしてませんよ、サラさん。

でも、あの時は本当にありがとう、カルロさん。

なんだよ、もう、いい感じじゃねえか。やっぱり、俺はもう邪魔者ってわけだ。風も強くなってきたし、俺はもう家に帰るぞ。この崖からの夜景でも見ながら、楽しい時間を二人で過ごしな。じゃあな、サラ。あと―—カルロも。

待って、フレッド。

そうですよ、フレッドさん。

サラ、俺を引き留める理由なんてないだろ、そのかっくいい若造がいるんだから。それに、なんでカルロ、お前まで俺を引き留めるんだ。わけがわからねぇ。

えっと、それは―—。

私が待ってもらったの、フレッド。私があなたをここに呼んで、カルロにも来てもらったの。彼は私にプロポーズしてくれたんだけど、私には一回別れちゃったけど、忘れられなくて、今も連絡を取ってる人がいるのって言って、お返事を待ってもらってたの。だから、彼を責めないで。

そうなのか、サラ。それにお前もよく知らずに怒鳴って悪かったな。でも、もう俺のことなんてどうでもよかったんじゃなかったのか。友達ねって言ったじゃねぇか。それでも、俺はこうやって仕事を無理やり終わらせてここにのこのこ来ちまったわけだが。

確かに、友達ねって言ったわ。でも、彼にプロポーズされたとき、あなたの顔が真っ先に浮かんだの。

それは嬉しいけどよ、サラ、現にきみはこうやってカルロくんを車に乗せてここまで来たんだろ。それに、さっきも、また彼のことを庇っただろ。

それはそうだけど。

でも、僕はサラさんが好きなようにしたらいいと思います。フレッドさんもそれをお望みでしょうし。

それは間違ってないな、よくわかってんじゃねぇか、カルロくん。ちなみに、あのタワーの11階がうちの事務所だぞ。

フレッド、カルロ、二人ともそこを動かないでね。私を許してね。


女は白い腕で若い男の背中を押した。あっという間に闇に消えていく。


男は崖の下を見た後、女の姿を探した。


女は続いて落ちていった。

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