一堂に会す
梅雨入り前の土曜。朝10時。副都心の駅前。
なんとなく外に出たくて
鳥ノ
コルサイド・ウモはこの街に引っ越してきて一週間。ようやく、自分の家の周りに慣れてきたと思ったら今日は駅まで連れてこられた。そして、ウモは母親とはぐれた。今日は父親がいないため母は少し不安を感じていた。私がウモを連れて移動できるだろうか、と。そうすると案の定はぐれてしまった。ちなみに彼女はもう改札を通ってしまった。
風が吹いた。
なんてことない風だった。
それでいて、この日を思い返すときにはいつも頭の中に吹いた。
ちょうどストーンヘッジの石とモアイの間の大きさぐらいで、黒とピンクのマーブル柄の大木の幹だけが落ちてきた。
早乙女はそれを一瞥しただけだった。強烈なツートンのデザインを見て、騒いでいた後輩たちの言葉が思い出される。パソコンの画面が緋色に染まって黄色の正七角形が浮かび上がってきましたと言っていた。人が疲れるとろくなことが起きない。彼は緋色だか朱色だか、別にどうでもよかった。花小井は持ってきた2番目にお気に入りの日傘を木のうろに入れてみる。何も起きない。細い傘と細い腕が太い幹がなすコントラスト。その様子を見たコルサイドは飛び跳ねて駆け寄り、さらに大きな声を出した。きれいな傘だね!子どもに慣れないのか花小井は驚いていたが、その大声で彼の母親は息子の存在を感知した。鵜園は木の位置からは離れていたが、大声でそちらに意識をやった。まだ時間はあると思って声の方へさっと歩き出す。その同年代らしくない軽い身のこなしに、鳥木はなぜか懐かしさを覚えた。大きな幹を見て彼は大木より孟宗竹の方が使い勝手が良いなんてお門違いなことを思った。
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