ゆでガエルの幸福性について

〈研究背景・動機〉

 水に入れられたカエルは水温が上がっても、それに気づかずに逃げ出すタイミングを失い、最終的にゆで上がって死んでしまう。このことから、ゆでガエルというのは、変化に気づき対応していくことは困難だが重要であるということを示すようになった。

 このような、警句とも言える言葉の存在価値を否定するわけではないが、この言葉は本当に重要なのだろうか。つまり、このカエルは、死んでしまったカエルは、最後に、ああ、なんで熱湯になっていることに気づかなかったのだろう、失敗した、と思っただろうか。早く逃げ出したい、でも、もう不可能だ、と後悔しただろうか。

 本研究では、このカエルが不幸だったのかどうかを調べていく。


〈仮説〉

 ゆでガエルのカエルは徐々に水温を上げられたことで、穏やかに最期を迎えられた。


〈研究方法〉

(1)一般的に言われている方法でカエル30匹をゆでる。0.5 Lの水道水を容器に入れカエルを入れる。1分後に沸騰するように、一定の割合でガスバーナーで加熱する。

(2)沸騰後、ゆで上がったカエルをトレーに移す。

(3)カエルに死ぬときに、幸せだった、どちらかといえば幸せだった、どちらかといえば不幸せだった、不幸せだったというアンケートをとる(具体的には、選択肢を書いた紙を沈めた水槽4つを準備し、トレーからどの水槽に移るかを調べる)。

(4)アンケートの回答割合を求める


〈結果〉

 幸せだった:50% どちらかといえば幸せだった:27%

 どちらかといえば不幸せだった:13% 不幸せだった:10%


〈考察〉

 幸せだったとどちらかといえば幸せだったを合わせると77%となり、これは仮説が妥当であると結論付けるのに十分な割合であると思われる。しかし、水槽に入って回答するという段階で冷たい水に触れることができているので、熱湯の苦痛が和らいでしまい、結果的に幸せに近い回答が増えた、という可能性も考えられる。

 また、幸せという概念が抽象的であるため、個体差をなくすために明確な定義を実験の前にあらかじめ提示しておくも必要であると思われる。


〈今後の課題・展望〉

 まず、今回の実験ではサンプル数が30匹と少なく、十分とは言えない。また、温度設定や時間設定が今回のもので最適かどうかという判断が行えていないことも課題である。ゆでガエルのほかに、生物を相手としたテーマとしては、現在、「飛んで火にいる夏の虫」の虫はどのような気持ちで火に向かっているのか、また、「火中の栗」は火の中で何を思っているのか、ということを検討中である。




注:これはフィクションです。

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