第2話:遺跡

 無機質に白い岩肌が四方に広がり、強いライトに照らされている。


 その中に、動く影が4つ。四方の壁に取り付いていた。


 全員が体の4割増の大きさの硬質で動きずらそうなスーツを着ている。頭部にはフルフェイスヘルメット姿で、岩に自分の体の半分のサイズはあるドリルを地面当て、その振動を堪えている。


 ドリルから出る岩の破片が飛び散るが、ドリルの保護カバーでスーツには当たらない。もし破片が当たりスーツに大きな穴が開いたら、中の人は酸欠と大量出血を起こし死んでしまう。だから緊張感ある作業ではあった。


 ヘルメットの中で彼ら彼女らの息遣いが聞こえる。ドリルの振動音は聞こえない。油断すると足がすぐに浮いてしまう。そうなると、壁に当てているドリルに力が乗らず作業効率が下がってしまう。


 各員が目の前の穴開け作業に集中する。


 作業員は足元の何箇所かに穴を開け、ヒビ割れた足元の岩盤が隣の作業員の作ったヒビと繋がるとドリルをその場に起き、手でその岩を引っ張ってみる。

 少し、引っ掛かりがあるものの徐々に岩が持ち上がった。

 作業員の体から比べると約1/4分ぐらいのサイズ。

 岩は見た目程重くはなく、この場所の重力は強くない。

 その作業員は体のバランスをとるぐらいで、軽々と持ち上げる。

 そして片手でその岩を後ろに放り投げた。

 軽い体はバランスを崩すが、すぐに持ち直す。

 岩の投げた先には他の作業員が、その岩を荷台に乗せ表に移動させる。

 そんな作業をこの場所でずっとしていた。


 穴を掘るだけならボーリングマシンを使えばいいが、今回のミッションは繊細だった。


 人の手で岩盤を確かめながら進む必要があった。しかもただ、穴を掘っているわけではない。掘った先にはある物が埋まっている。


 それを傷つけてはいけない。


 大きく穴が空いた所から、スーツの硬質な手で破片を払い、開けた穴の奥がまだ岩だと確認すると、またドリルで穴を開ける。


 最初にミッション聞いた時から、特殊な事例だと伝えられていた。

 それは不可解な報告書が上がって来るまでは誰も意識していない事だった。

内容に、その報告書を見たものは殆どが疑いを持っていた。


 だが、不安定な自分達の住処に、不確定要素を残して住み続ける事はできない。何よりもこの先何十年・何百年・何千年とこの場所を住処とする上では大事な事だった。


 調査隊を結成し無駄だと思う事でも安心を得られるまでは対応しなければならない。

 自分達の地面を詳しく探したところ、その不可解な報告書の可能性が上がり、実際に掘り起こしてみる事となった。


 そして3ヶ月


 黙々と作業をしている中、一人の作業員が手に伝わる違和感を覚えドリルから手を離した。

 地面に四つん這いになって、地面に転がる岩盤の破片を道具箱から出したハケで掃いて綺麗にしてみる。


 そこには綺麗な平面があった。


 フェイスシールドの上からでも見てわかる、自分たちの作業スーツが反射して写っている。

 とても自然にできたとは思えない、黒光りする綺麗な平面がそこにあった。

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