第24話 霊峰

「誰か通るわ」

参人まいビト待人まちビト?それとも荒人あらビト?」

待人まちびとよ。祈念を」

 東大陸国ジペングニアの中心に位置する練島ねりじまには、白渓はっけいと呼ばれる霊峰れいほうがある。

 待人まちビトと呼ばれる生を終えた者が、創作者デューの元へ滴下する帰る前に立ち寄る場所とされ、そこへ繋がる霊導には、やしろ鳥居とりいが建てられるようになった。

 その末端にある、最初の鳥居は"境界門きょうかいもん"と呼ばれ、そこからは参人まいビトと呼ばれる、神職に携わる者しか通行は許されない。

 霊導を歩く待人まちビトを鳥居の上から見送る三人は、守人もりビトである。宿り子や待人まちビトの存在を"見る"ことのできる妖霊種もののけがその役目を担っている。本来は、霊導の清掃や社の手入れなどの仕事が中心なのだが、最近になって境界を踏みにじる侵入者が増えてきており、その取り締まりに忙殺されるようになってきた。

「今日は平和だね。でも、何で知られちゃったんだろう?」

「神職に携わる者だろうと所詮はヒト。誰かが口を滑らせたって不思議ではないわ」

「ええ。一度漏れ出たものは戻らないわ」

 が広まっていた。

 白渓はっけい待人まちビト場所ではなく、本来よりも早くに死を迎えた者が、残りの寿命をために訪れる場所であると。

 死んでしまった者大切な人と、もう一度会えるかもしれない。

 という純粋な希望が、霊峰への道を汚す結果を生んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る