第18話 夕日

 丘の上にある家で、母と子の親子が暮らしていた。

 ある日、2人の元に手紙が届いた。

 手紙を読んだ母は、とても元気をなくしてしまう。

 子はそんな母の姿を見て、父が早く帰ってくればと願う。

 父は仕事で遠く東の方へと出かけ、まだ帰ってこない。

 次の日。

 母は子に、森でオレンジを取ってくるように頼む。

 次の日。

 母は突然、西の国の伯父さんの所へ行くと言い出す。

 昨日のオレンジはそのお土産だという。

 母と子は、荷物をまとめて家を出た。

 その日の夜。

 2人は西の国にたどり着いた。

 しかし東の方を見ると、そこにはまだ赤々とした光が輝いていた。

 子は母に-

「今日は夕日が沈まないね」

 と言う。

 母はただ-

「そうね」

 とだけ言った。

 泣いているのか微笑んでいるのか、よく分からない母の顔が、沈まない夕日で照らされていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る