第21話 空泳

 空を、魚が泳ぐことがある。

 大きなクジラが、屋根の上すれすれを通り過ぎることもあれば、小振りなジンベエザメが路地の隙間を縫うように漂っていることもある。

 特にここ、東大陸ジペングニアではそれがよく見られている。事実今、私たちの頭上を巨大なエイが羽ばたき、通りに影を生んでいた。

「おぅ…」

 横で爬虫亜族レプティスの女性が、感嘆の声を漏らしていた。

「良かったですね。観ることができて」

 エイを見送った後、私は改めて彼女に声をかけた。

「ええ。遥々西大陸から来た甲斐がありました。ありがとうございます」

「私は何もしてないですよ。何となくそう思っただけで…」

 妖霊種もののけの私は、種族的な特性からか、の来訪を感じることができる。ちなみに神社の巫女として働いているが、神を信じているかというとそうでもない。

「その通りになったじゃないですか。神社はお近くなんですか?是非お参りさせてください」

「いいですよ」

 こういう出会いを味わえるのが、主な志望動機。

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