第3話 神棚

 東大陸ジペングニアは、神様がとても身近な国である。

 シャクジ町商店街に豆腐屋でも、狐の姿をした神いなりサマを代々祀っていた。

 神棚には、自家製の油揚げを使った料理を毎朝供えている。

「すいません。あの子のが最後のひとつでして」

 空っぽになった棚を示しながら、豆腐屋の店主は申し訳なく頭を下げていた。

「あらあら。そうなの」

 紙幣片手にやって来たその女性は、店特性の豆乳菓子を嬉しそうに持ち帰る子を残念そうに見送った。

「初めてのお客様ですよね。せっかく来てもらえたのに申し訳ございません」

「こんな時間にもう売り切れ?繁盛してるわね」

「お陰様で。お供えの方も気に入ってもらえたみたいでして」

 と、店主は大きな巾着を供えた神棚に目を移した。

「明日のお供えも、たくさんの感謝を込めないといけませんね」

「じゃあ、アレにしたら?」

 と、女性は先ほどの子を指した。

「あの菓子をですか?神様いなりサマへのお供えにしては物足りない気が」

「時には神様にも口直しは必要よ。3日続けて特大巾着じゃ、さすがに飽きもしてくるわ」

「それもそうですかね」

 女性が立ち去った後、店主はあることに気づいた。

「あれ?なんで巾着が3日続いた事を知ってたんだ?」

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